自動車のブレーキとは
1t以上の重量を持つ自動車が、時速50Km以上で走行するのですから、ブレーキは車を運転する上で、無くてはならない非常に重要な役目を担っています。
摩擦の力で運動エネルギーを熱エネルギーに変えて、その熱を放出する事で自動車を減速・停止させます。その為、強度や耐久性はもちろんの事、摩擦材の寿命や燃費と言った経済面等、あらゆる面での信頼性が求められます。今回はそんなブレーキの仕組み等について、起筆していきたいと思います。
目次
●ブレーキの仕組
まず、簡単にブレーキの仕組みについて解説致します。
ブレーキペダルを踏む事によって、ブレーキが効くのは皆さんご存じの通りですが、一連の流れは以下の通りです。
↓ | ブレーキペダルを踏む |
↓ | ブレーキペダルから倍力装置を介してマスターシリンダーへ踏力が伝わる |
↓ | マスターシリンダーのピストンが押され、ブレーキ配管を通じて各ブレーキへ油圧の力が伝わる |
↓ | 各ブレーキのピストンが油圧の力によって押され、ブレーキパッド又はブレーキライニングが押し出される |
↓ | ディスクローター又はブレーキドラムとブレーキパッド又はブレーキライニングが摩擦する事で制動力が生まれブレーキが効き自動車が止まる |
これらのプロセスを経て、自動車は安全に停止します。
では次に、各ブレーキシステムについて起筆致します
●ディスクブレーキとドラムブレーキ
ブレーキと言っても様々な種類がありますが、大きく2つのシステムに分ける事が出来ます。一つは「ディスクブレーキ」、もう一つは「ドラムブレーキ」です。
ディスクブレーキ | 乗用車に一般的に使用されている。表面が露出している為、走行時風で冷やされるので放熱性に優れている。両側からブレーキパッドで挟み、ローターに押しつける事で自動車を減速・静止させるので制動性が安定している。 |
ドラムブレーキ | 構造が簡易な為、低コスト。以前は商用車に使用されている事が多かった。ドラムブレーキ自体は表面に露出しているが、ブレーキパッドのある内部が密閉されている為放熱性が悪い。 |
ディスクブレーキ、ドラムブレーキそれぞれに良さがありますので、前輪・後輪共にディスクブレーキまたはドラムブレーキを使用している自動車も有れば、前輪と後輪とで使い分けている自動車もあります。
国産車の場合は、基本的にブレーキパッドを摩耗させて制動力を発生させる、という考え方の元作られていますが、輸入車の場合はブレーキパッドとディスクローターの両方を摩耗させて、制動力を発生させていますので、ブレーキパッドの交換2回に1回はディスクローターの交換が必要になります。
他にも、パーキングブレーキがありますが、パーキングブレーキについは、別途後筆致します。
●ディスクブレーキについて
ディスクブレーキは車輪と共に回転する円板(ディスクローター)が設けられています。これを両側から摩擦材(ブレーキパッド)で挟み、摩擦材(ブレーキパッド)をディスクローターに押し付ける事で減速・停止させるブレーキシステムです。摩擦材(ブレーキパッド)をディスクローターに押し付けた時に摩擦力が発生するので、この摩擦力によって運動エネルギーが熱エネルギーに変換されます。
摩擦材(ブレーキパッド)の動きを制御する部品にブレーキキャリパーという部品があります。2枚の摩擦材(ブレーキパッド)を内部に収めていて、ディスクに鞍の様に跨っています。油圧によってキャリパーに備わったピストンが作動すると、摩擦材(ブレーキパッド)が内側に押されて、ディスクローターを挟み付け、自動車を減速・停止させます。キャリパーはホイールの隙間から確認する事が出来ます。
キャリパーには3種類ありますが、1つ(スライディング・キャリパー)は浮動型をベースにしたものなのでここでは割愛し、他の2種類について起筆したいと思います。
◇浮動ブレーキキャリパー(フローティングタイプ)
浮動ブレーキキャリパーとは、ブレーキキャリパーの位置が固定されずに、パッドの残量等によってキャリパーの位置が移動するタイプを指します。
このタイプはローターの内側にのみピストンがあり、ピストンが押し出され、ピストン側のパッドがローターに押し付けられる事により、制動力を発生します。
この方式はスライドピンと言うパーツによってキャリパーが動き、外側のブレーキパッドはキャリパー本体によってローターに押し付けられる事になり、両側からローターを挟み込む仕組みです。
ピストンを片側だけに配置する事により部品点数が少なくなり、キャリパー自体も小型化出来る為、一般的に主流になっているタイプで、特に軽自動車や小型車で使用されています。特性上、どうしてもローターにブレーキパッドが均一に当たり難くなる為、片減りや偏摩耗が発生しやすくなるデメリットがあります。
◇固定ブレーキキャリパー(オポーズドタイプ)
固定ブレーキキャリパーとは、車体にブレーキキャリパーが固定されおり、内側・外側にピストンを配置し、一般的には対向キャリパーと呼ばれています。キャリパーの片側に、1~3個のピストンを配置し、両側の数で4ポッド・6ポッドキャリパー等と呼ばれます。
両側から複数のピストンを押す事によって、ブレーキパッドを均一に且つ同タイミングでディスクローターに押し当てる事が出来る為、パッドの引きずり等が発生しにくい等のメリットがあります。
ローター径やキャリパーサイズが大きくなる事で、このメリットがより生きてくる為、ハイパワー車や高級車、レーシングカーなどに採用されることが多く、クラウンやセドリック等の高級車に導入されてきました。
部品点数が多く、キャリパーサイズも大きくなり重量も増すので、バネ下重量が増える・装着出来るホイールに制限が出てくる等の点が、デメリットとなってきます。
●ドラムブレーキについて
ドラムブレーキは車軸と共に回転する円筒状のブレーキドラムの内側に、摩擦材(ブレーキライニング)を張ったブレーキシューを押し付ける事によって自動車を減速・停止させるシステムです。
ドラムブレーキには、ブレーキシューの動きを制御するメカニズムや形式が複数ありますので、紹介したいと思います。
◇LT式(リーディング・トレーディング式)
ホイルシリンダーを1つ配置し、回転方向側に配置されたリーディングシュー、反対側に配置されたトレーディングシューをドラムに押し付け、摩擦によって自動車を減速・停止させます。
リーディング側は回転方向になるので、ドラムに押し付けられ自己倍力作用が生まれ、より強い制動力が生まれます。反面、トレーディング側の制動力はそれほど強くはありません。後進時は反対方向へ回転する為、トレーディング側が前進時のリーディング側の役目をすることになり、前進後進で制動力に差が出なくなり動きが安定します。現在、一般乗用車の大半のリアブレーキに採用されている方式になります。
◇リーディング式
2リーディング式とは、ホイルシリンダーを2つ配置し、2枚のブレーキシューをそれぞれリーディングシューとする事で、より強い制動力を発生させる事が出来る方式です。反面、後進時には制動力が弱くなる為、ピストンが左右に広がり前進時と後進時に両方をリーディング側として使う、デュアル2リーディング式と呼ばれるタイプも存在します。こちらの方式は主に小型トラック等に採用されています。
◇デュオサーポ式
プライマリーシューとセカンダリーシューがロッドで連結されており、プライマリーシューの自己倍力作用がロッドを介してセカンダリーシューに伝わり、より強力な制動力を生み出します。摩擦による自己倍力作用を利用している為、摩擦係数が下がると呼応して制動力も下がってしまいます。ブレーキは構造上、連続して使用するとどうしても熱が発生する為、熱ダレによる摩擦係数の低下によって制動力が下がりやすくなります(フェード現象)。
最近では、トラック等のセンターブレーキ(パーキングブレーキ)に使用される事が多い様です。
●パーキングブレーキについて
サイドブレーキやフットブレーキと呼ばれる事もあるパーキングブレーキですが、普段、パーキングブレーキをあまり使用されないお客様から「パーキングブレーキって必要なの?」と尋ねられる事があります。
パーキングブレーキは2種類あるブレーキ操作系統の内の一つです。そもそも、フートブレーキとは別系統で、パーキングブレーキを備える事は保安基準で定められており、駐車の際もPレンジのみでパーキングブレーキを作動させていないと、実は道路交通法違反になります。そんなパーキングブレーキにも種類がありますので解説させて頂きます。
◇ドラムブレーキ式
1番ポピュラーな方式です。ドラムブレーキのブレーキシューにワイヤーを接続し、ハンド又はフットペダルと繋ぎ、ワイヤーを動かす事によって、物理的にブレーキシューを稼働させてブレーキを掛けます。
ワイヤーの戻りが悪いとブレーキを引きずる原因になります。
◇インドラム式
リアブレーキにディスクブレーキを採用している自動車において、ブレーキローター内にドラムブレーキを設置する方式です。ブレーキローターがブレーキドラムの役割も果たす形状に作られており、その中にブレーキシューが組み込まれています。こちらもブレーキシュー自体は、ワイヤーによって作動する構造になっています。
◇インキャリパー式
リアブレーキがディスクブレーキを採用している自動車において、リアのブレーキキャリパーに直接ワイヤーを接続し、キャリパー内のピストンを、強制的に押し出してブレーキを作動させる方式です。構造上、部品点数が多くなる他に、車種やキャリパーの構造によっては、パーキングブレーキの制動力が十分に得られないといったデメリットがあります。
◇電動パーキングブレーキ(EPB)式
パーキングブレーキが電動化されたもので、スイッチひとつでパーキングブレーキをかける事が出来ます。リアブレーキのキャリパーに装着された電動モーターによって、ピストンを押し出し、ブレーキを作動させる方式で、最近の自動車に多く見受けられます。
電動式になると、室内での操作はボタン操作、又はPレンジ時にオートで作動するタイプが多く、オートブレーキホールド機能が付いている自動車になると、停止直後に自動でパーキングブレーキがかかる為、EPBスイッチを操作する必要がありません。電動の特性上パッド交換等、整備の際は診断機を使わないとピストンを戻す事が出来ない等、一手間を要します。
余談ですが、高級車やスポーツカー、チューニングカーになると、メインのブレーキキャリパーとは別に、パーキングブレーキ専用のブレーキキャリパーを装着した、ツインキャリパーと言うシステムもあります。これは、この類の自動車に装着されるビッグキャリパーと呼ばれるものに、パーキングブレーキの機構が装備出来ない為、別にパーキングブレーキ用のキャリパーを装着する必要がある為です。 次はブレーキパッドの種類について触れていきたいと思います。
●ブレーキパッドについて
ディスクブレーキとドラムブレーキの中で、何度も出てきたブレーキパッドですが、ブレーキパッドは、タイヤに連動して回転しているブレーキディスクを両側から挟み込む制動装置の事です。ブレーキパッド=摩擦材なので、これをブレーキディスクに押し付ける事で摩擦力が発生し、自動車は減速・停止します。その際に、ブレーキパッドはわずかずつ削られ摩耗していきますので、定期的に交換が必要な部品になります。 ブレーキパッドは20種類以上の素材が組み合わさって出来ています。
◇ノンアスベストパッド
ノンスチール・ノンアスベストで作られ、ノーマルパッドと呼ばれています。特徴として、ブレーキ鳴きがしにくく(低ノイズ)、ブレーキダストも比較的出にくく、ブレーキローターへの攻撃性が少ないと言われています。耐摩耗性は高いので比較的長持ちしますが、耐熱性があまり良くないので、熱ダレしやすいという欠点もあります。一般乗用車等に幅広く用いられています。
◇セミメタルパッド
スチール繊維等で作られたパッドです。耐久性がよく、制動力もノンアスベストパッドと比べると優れています。デメリットとしては、金属素材を用いている為、ブレーキダストが出やすく、ブレーキの鳴きも発生しやすくなっています。
◇カーボンメタルパッド
主にスポーツ向けの為、寿命は全体的に短い傾向にあります。鳴きやすい、ブレーキダストが出やすい、ブレーキローターへの攻撃性がある等のデメリットも多くありますが、耐熱性と制動力に優れています。素材はカーボンファイバーとスチール繊維を元に作られています。
◇メタルパッド
金属を元に作られたパッドで、レーシングカーやチューニングカー等に使用されています。耐熱性と制動力に優れますが、カーボンパッド以上にローターへの攻撃性・ブレーキダストが出やすい・鳴きやすいと言った欠点があります。特にダストについては、それはそれは恐ろしい程ホイールが鉄粉まみれになります。
●ブレーキローターについて
ブレーキローターは円盤型をしていて、タイヤを回すシャフトに取り付けられています。ホイールと一体で回転し、ブレーキを掛けた時にパッドで両側から挟みます。その摩擦力で回転を止めて制動させる働きをしています。
基本的にはパッドの方が摩耗しやすい素材でできていますがディスクローターも少しずつ摩耗していきます。このブレーキディスクローターにも複数の形状がありますのでご紹介したいと思います。
◇プレーンローター
ごく一般的なノーマルのローターです。1枚物のディスク(ソリッドローター)と、2枚を合わせた様な形状のベンチレーテッドディスクがあります。ベンチレーテッドディスクは、ディスク間の隙間に風を通す事によって、ブレーキの冷却効果を高めます。
幅広い乗用車に採用されていますが、ターボ車やハイパワー車など、ブレーキの負荷が大きい車に対しては、ベンチレーテッドディスクが採用されます。
◇スリットローター
ディスクの表面にスリットと呼ばれる溝加工を施し、パッドとローターの摩擦を高めた上で、溝によってパッドの表面を削り、熱等で変質した部分を削って、制動力を保つ役割も果たします。スリットのお陰で放熱性も多少高まります。パッドを余計に削る分、パッドの寿命が短くなる、ブレーキダストが出やすくなる等のデメリットがあります。
◇ドリルドローター
ディスクの表面に穴あけ加工を施し、放熱性と摩擦を高めたローターです。摩擦が多くなっているので、パッドへの攻撃性がある他、ブレーキダストが出やすく、穴あけ加工によりディスク自体の耐久性は低下します。
サーキットや高速道路等において、ディスクが摩耗した状態で高速域からフルブレーキをすると、ディスクにクラックが入る事もあります。
◇ドリルド・スリットローター
スリット加工と穴あけ加工を両方施したディスクになります。両方のメリット・デメリット両方の特性を併せ持つディスクです。スリットとドリルホールで効率よく放熱し、冷却効果と制動性が向上します。デメリットとしては、特にパッドの消耗が早く、ブレーキダストが多くなります。また経年使用により、ドリルホール部分からのクラックリスクがあります。
◇カーボンローター
一般的にはあまり見かける事の無いローターで、カーボンセラミックで作られたローターです。その重量はなんと一般的な金属製ローターの約50%!
スチールディスクで熱容量を大きくしようとすると、必然的にローターは重厚で大きくなります。そうするとバネ下重量が重くなり、タイヤが路面を捉える性能(路面追従性)が悪くなりますので、圧倒的なバネ下重量の削減は大きなメリットになります。
強度、耐久性も金属ディスクを上回り、更には腐食にも強い夢のようなディスクですが、原材料の関係上、非常に高価なディスクになります。レーシングカーをはじめ、ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニ、コルベット、マセラティやアルファロメオ、レクサス、日産GT-R、ホンダ NSX等世界の名だたる最高級車に採用されています。スーパースポーツカーには欠かせない装備になります。先程レクサスの名前が挙がりましたが、日本車で初めてカーボンセラミックブレーキを標準装備したのは2010年発売のレクサスになります。
余談になりますが、超音速旅客機コンコルドやボーイング等の航空機にもカーボンブレーキは採用されています。
●ブレーキの点検について
ブレーキの点検を怠ると、ブレーキの効きが悪くなるペーパーロック現象が発生し、停止距離が長くなる等の危険性が増します。国土交通省でも日常点検の実施を呼びかけています。
国土交通省「自動車総合安全情報」より
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02maintenance/daily_check.html
ブレーキ・ペダルを踏み込んだ時、またはサイドブレーキ(パーキングブレーキ)を使用した時に、いつもと違うな、と違和感を感じた場合はすぐに車を見て貰いましょう。そのままにしていると緊急時に対応が出来ず、大きな事故に繋がる恐れもあります。
では、私達整備士は普段ブレーキのどこをどんな風に見ているのでしょう?点検項目とその内容について起筆致します。
◇ディスクブレーキの点検
ブレーキパッドに偏摩耗がないか | ブレーキパッドが偏摩耗等、左右で減り方に差があると、ピストンの戻りが悪い・スライドピンの動きが悪い等の原因が考えられます。 どちら側のパッドに偏りが出ているかによって、原因を探して修理します。 |
ブレーキパッドの表面が変質していないか・汚れていないか | ブレーキパッドの表面が変質してしまうと、摩擦係数が落ちて制動力が低下します。グリスやオイル等が付着している場合も同様に制動力が低下します。 |
ブレーキキャリパーの外観に異常は見られないか | 走行中に飛び石が当たったり、車の下を何かにぶつけたりした時、ブレーキキャリパー本体に傷等が入る事があります。 多くのブレーキキャリパーはアルミ製の為、アルミは強い衝撃が加わるとその時は大丈夫でも、何かの拍子に突然割れる事があります。もし走行中にブレーキキャリパーが破損してブレーキが効かなくなれば重大事故につながります。 |
ブレーキホースの取り付けからブレーキオイルの漏れはないか | ブレーキキャリパーとブレーキホースの取り付け部分、ブレーキパイプとブレーキホースの取り付け部分からブレーキオイルの漏れがないか確認します。ブレーキには強い圧力が掛かる為、漏れが発生していると、いずれ、リザーブタンクのブレーキオイルが無くなってしまい、ブレーキが効かなくなり重大事故につながります。 |
ブレーキホースにヒビ・接触等による損傷はないか | ブレーキホースはゴムで出来ている為、曲がり部分の劣化によるヒビや外的要因の損傷に弱いです。ヒビや損傷部分から漏れが生じる為、異常がある場合は直ちに交換が必要になります。 |
・スライドピンのダストブーツに破れはないか ・スライドピンに曲がりや摩耗はないか | 通常、スライドピンはグリスで潤滑されダストブーツによって保護されています。ダストブーツが破れていたり、ちゃんと装着されていないとスライドピンにゴミや水が入り、グリスが枯渇して動きが悪くなる、砂やゴミが噛んで動きが悪くなる、砂等でスライドピン自体が偏摩耗していまう等、不具合が発生してしまします。また、スライドピンの動きが悪くなるとブレーキの引きずり等が発生します。 |
・ピストンのダストシールに破れはないか ・ピストンのシールよりブレーキオイルの漏れはないか ・ピストン自体に錆びや腐食が発生していないか | ピストンを保護しているダストブーツに破れが発生すると、内部に水やゴミが入り込み、ピストンシールの損傷からオイル漏れ、錆びや腐食によってピストンの動きが悪くなる等の現象が発生します。 ピストンシールからオイル漏れが発生すると、重大事故につながります。ダストシールの破れや漏れが発見された場合、シールキットを用いてキャリパーのオーバーホールを行いますが、ピストンやキャリパー内部の錆びや腐食・摩耗が酷い場合はブレーキキャリパー自体の交換が必要な場合もあります。 |
・ディスクローターにクラック等がないか ・ディスクローターの表面が錆びていたり焼けていないか | ディスクローターには摩耗限界点が設定されています。摩耗限界点を超えて使用していると、高速走行時のブレーキングなどでディスクにクラックが入ったり最悪ディスク自体が割れて重大事故につながる恐れもあります。 また、表面が焼けて変質していると、摩擦係数が下がり制動力が落ちてしまいます。錆びが発生している場合は、ブレーキの引きずりや片効き等が発生する事があります。パッドとローターがちゃんと接触していない部分は錆びが発生します。 |
ブレーキテスター等を用いて正常な制動力は出ているか、ブレーキの引きずりはないか | 見た目だけの点検では、実際どこか1輪だけ制動力がおかしい場合や、軽微な引きずりを起こしているのか分からない場合があります。 テスターを用いて実際の数値を測定し、異常がないか点検します。 |
◇ドラムブレーキの点検
次にドラムブレーキの点検項目とその内容を起筆致します。
ブレーキドラムに摩耗や焼けクラックが入っていないか | ブレーキドラムも消耗品です。ブレーキシューとの当たり面が摩耗してクラックが入ったり、焼けて変質してしまう事があります。調整の欄で後述しますが、完全に割れて無くなってしまうこともあります。 |
ブレーキシューに偏摩や変質が無いか | ブレーキシューに偏摩耗がある場合は、グリスが切れて動きが悪い場合や、荷物の積み過ぎ等で発生します。特に荷物を沢山積まれて、いつも過積載気味に走っている自動車では、リーディング側が極端に減っている事もあります。表面が変質していると、摩擦係数が下がり制動力が低下します。 |
ホイルシリンダーのダストブーツは破れていないか、漏れはないか | ホイルシリンダーのダストブーツが破れていると、中に水やゴミが入り込み錆びや腐食、漏れの原因になります。漏れがあると、重大事故に繋がります。漏れがある場合はホイルシリンダーのカップキットを用いてオーバーホールしますが、内部の状態によっては、ホイールシリンダー自体の交換が必要になる場合もあります。 |
リターンスプリングは適切に掛かっているか、破損が無いか | ブレーキシューにはリターンスプリングが掛かっており、ブレーキを作動させていない時はブレーキが引きずらないようになっています。 スプリングのかけ方を間違えたり、スプリング自体に破損があるとブレーキシューが適切な位置に戻らず引きずりの原因になります。 |
アンカーピンが適切に掛かっているか | ブレーキシューはアンカーピンによって、バックプレートにある程度位置決めされています。このアンカーピンが適切に掛かっておらず、外れた場合、ブレーキシューが適切な位置に収まらず、ブレーキの引きずりやブレーキがしっかり効かない原因になります。 |
調整は適切であるか | ドラムブレーキの調整は非常に重要です。調整がきっちりっされていないと、様々な不具合が生じます。調整が緩い場合は、十分な制動力が出せませんし、逆にキツすぎるとブレーキの引きずりが発生します。ブレーキを引きずると発熱し、ブレーキドラムやブレーキシューが焼けて変質し制動力の低下につながります。あまりに調整がキツイ場合は、最悪の場合、発熱し過ぎて走行中にブレーキドラムが完全に割れてしまって、脱落する事もあります。 実際に、過積載+調整キツすぎが原因で、発熱によってブレーキドラムが真っ二つに割れて、脱落し部品が行方不明になった自動車を見た事があります。乗っている自動車が事故につながる可能性もありますし、脱落したブレーキドラムで後続車両が事故に遇う可能性もあります。 |
ブレーキパイプの取り付け部分に漏れはないか | ホイルシリンダーとブレーキパイプの取り付け部分からブレーキオイルの漏れがないか確認します。漏れがある場合は、重大事故につながる可能性があるので、修理が必要になります。 |
●まとめ
ブレーキには様々な種類や構造がありますが、その用途によって、適切なブレーキシステムやパーツを選択する必要があります。更には、点検方法や点検頻度も変わる為、適切な点検整備が必要です。
ブレーキは、私たちが安心安全に自動車を利用し、生活する上で欠かす事の出来ない装置です。もし、走行中にブレーキに異常が生じて事故に繋がってしまったら、誰かの大切な人を奪う事になるかも知れません。また自分自身が、もしくは自分の大切な人が悲しい思いをするかも知れません。緊急性を感じていなくても適切な時期に点検整備を受ける事が、結果としてお客様の安心安全なカーライフに繋がります。また小まめに予防整備を実施する事で、愛車の整備にかかるす生涯費用はトータルとしては安くなる可能性があります。
現在自動車は、性能向上により不具合が発生しづらくなっていますが、消耗品が数多く使用されているのも事実です。予防整備で消耗品を適切な時期に交換する事で、結果として燃費が良くなったり、機能低下を防ぎます。日常点検の中で、また普段運転していて違和感を覚える様な事がありましたら、出来るだけ早くプロの点検を受けられる事をおススメ致します。