車のバッテリーの繋ぎ方

基本と対策

 近年、ハイブリッド自動車や、アイドリングストップ自動車等が普及した事により、バッテリーの種類も増えてきました。用途によって、どんな種類のバッテリーがあるのか、バッテリーの仕組み等、今回はバッテリーの事を勉強していきたいと思います。

●バッテリーの構造

 

①バッテリーの役割

 バッテリーは自動車にはなくてはならない存在です。バッテリーは電気を蓄え、その電気を電装品に送って使用出来る様にする為のものです。具体的には、自動車のキーをオンにする事でECU等に通電して、エンジンの始動に必要な準備を行います。クランク角度の検知や燃料ポンプを稼働させたり、燃料噴射装置の準備をします。そこからセルモーターを回転させるにも電気を使いますし、エンジンが掛かってからも、燃料装置や点火プラグに電気を送る等して電気は使われ続けます。

 バッテリーに蓄えられた電気だけで自動車をずっと動かす事は不可能なので、オルタネーターと呼ばれる発電装置で発電して、バッテリーに電気を貯めながら自動車は動きます。ではエンジンが掛かってしまえば、バッテリーは必要ないのか?と思われるかも知れませんが、自動車には様々な電装品が使われており、発電容量だけで自動車の全ての電装品を賄う事は出来ません。また、オルタネーターには発電量を制御する装置がついていますが、それでも、エンジンの回転数や、電装品の使用状況等によっては電気の供給が不安定になる事もあります。そんな時に、バッテリーからの電気も使用する事によって、どんな時でも安定して自動車の稼働と電装品の使用が出来る様になっています。

②バッテリーの構造

 簡単にバッテリーの構造を見ていきましょう。バッテリーはプラスとマイナスの極性の鉛板と、それが接触してショートしない為の仕切りの集合体である極板群と呼ばれる物と、バッテリー液を貯める為の層(セル)によって構成されています。12Vのバッテリーですと、2V極板群とセルが6つ直列に並んで構成されています。各セルには電解液と呼ばれる希硫酸が注入されています。

 蓋にはケーブルが接続出来る様に、プラス端子とマイナス端子が取り付けられています。

③バッテリー表記の見方

 バッテリーは上面に形式が表示されています。ここを見ればバッテリーの性能やサイズ、容量を知る事が出来ます。数値が大きい程性能がよくなります。

 例えば、以下の様な表示のバッテリーがあるとします。

ここに[40B19L]と表記されているのが見えるでしょうか⁉
この表記が、性能ランクやサイズを表しています。
①バッテリーの性能ランク
 単位:無し
この数字は、バッテリーの総合性能を表しています(始動性能・容量)。数字が大きくなる程高性能になっていきます。(50未満は2刻み、50以上は5刻みの表示)
②バッテリーの側面サイズと端子形状(短辺側)バッテリーの側面の幅×高さのサイズを表しています。A~Hで表記され、アルファベットが大きくなるほどサイズが大きくなります。
記号箱高さ端子形状
A127162ボルトナット式
B129(127))203テーパー式(細端子)
C135207テーパー式(細端子)
D173204テーパー式(太端子)
E176213テーパー式(太端子)
F182213テーパー式(太端子)
G222213テーパー式(太端子)
H278220テーパー式(太端子)
(JIS規格で幅×箱高さの区分が決まっています)
③バッテリーの長さ
(長辺側)
 単位:cm
バッテリーの長辺側の長さを表しています。
19の場合は19㎝となります。
④バッテリー端子の配置
 (L/R表示)
バッテリー端子の配置を表しています。
バッテリーの短辺側から見て、プラス端子が右にある場合はR。
プラス端子が左側にある場合はLになります。

●バッテリーの種類

 一口にバッテリーと言っても、用途やタイプによって様々な種類があります。エンジンの始動や電装品の使用等に使われる「補機バッテリー」と、ハイブリッド自動車や、電気自動車の走行に使用される「駆動バッテリー」があります。車が進化した事によってバッテリーの種類も増えました。それでは基本的なバッテリーの種類から見てみましょう。

①基本的なバッテリーの種類

開放型バッテリーバッテリーを使用していると、充電等の際に内部でガスが発生します。そのガスの圧力を逃がす為の蓋が付いているタイプのバッテリーになります。ガスが逃げるのと同時に、化学反応によってバッテリー液も蒸発していくので、定期的なバッテリー液のメンテナンスが必要になります。バッテリー液の補充の際には、精製水を使用しますが、精製水によって元々の希硫酸が薄まっていき、徐々にバッテリーの能力は低下していきます。
密閉型バッテリー一般的にMF(メンテフリー)と呼ばれるタイプのバッテリーです。内部の電極の素材によってガスを発生しにくくして、蓋もバッテリー液が蒸発しにくいように工夫されている為、メンテナンスの頻度は下がります。完全に密閉されている訳ではないので、解放型バッテリー程ではありませんが、メンテナンスは必要になりますし、バッテリーを傾けたり倒したりする事で、内部のバッテリー液は外に漏れ出してしまいます。
ドライバッテリー電極の間にバッテリー液を染み込ませた繊維を配置したり、ゲル状にしたバッテリー液を使う事によって、液体を使わずに完全に密閉したバッテリーとなります。
ガスが発生しない訳ではないのですが、非常に少ない為、内部の構造によって外に逃がす必要もありません。通常のバッテリーと比べて自己放電が非常に少なく、また同サイズで、より強い電力を使用出来るので、バッテリーの小型化や軽量化が可能になります。液体を使用していないので、横向け等の配置も可能です。
リチウムイオンバッテリー(補機バッテリー)一般的に家電製品や、携帯電話等に使用されるイメージのリチウムイオンバッテリーですが、自動車やバイクの補機バッテリーに使用される事もあります。
リチウムイオンバッテリーは通常のバッテリーと比べ、小型軽量で充電容量が多く、自己放電等も少ない為、優れたバッテリーとなりますが、低温や過充電等に弱く、通常のバッテリーよりも高価になります。小型化のメリットを生かし、最近ではバイクに採用される事が多くなっています。車両の仕様等によっては、自動車の補機バッテリーへの使用も可能です。
リチウムイオンバッテリー(ハイブリッド・電気自動車)上記のリチウムイオンバッテリーと同じですが、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用のリチウムイオンバッテリーは、大型で非常に高価な物になります。自動車の維持において、このバッテリーの寿命が大きなターニングポイントとなる事になります。
ニッケル水素バッテリーこちらもハイブリッド自動車の駆動用バッテリーに使用されます。ニッケル水素バッテリーの方がコストが安く、低温下ではリチウムイオンバッテリーよりも耐性が高い為、現行トヨタ・プリウスの低グレードモデルや寒冷地モデル等に採用されています。
プリウスの3代目迄は全車ニッケル水素バッテリーが採用されていました。重量はリチウムイオンバッテリーよりもニッケル水素バッテリーの方が重くなります。

②次に、「用途別に使用されるバッテリー」について起筆致します。

充電制御型バッテリー自動車が発電し、バッテリーに充電する為には、オルタネーターをベルトで駆動して、発電充電をする方法が取られています。発電中は常にオルタネーター分の負荷がエンジンに掛かっているので、多少なりとも燃費に影響を及ぼします。そこで、必要の無い時はオルタネーターを停止させて余分な発電を減らす事で、エンジンの負荷を減らし燃費向上等を図っているのが、充電制御式の自動車です。
従来の自動車に対して、充電制御自動車は、電気が一定数貯まれば発電を完全に停止して、バッテリー内の電気のみを使用する為、従来のバッテリーよりも大容量で高出力、また、素早い充電性能に優れた物が必要となります。この様な過酷な環境に耐えられるバッテリーとして誕生したのが充電制御システム対応のバッテリーです。
アイドリングストップ自動車用バッテリー基本的に求められる性能は、上記の充電制御システム対応のバッテリーと同じですが、アイドリングストップ自動車の場合は、頻繁にエンジンの停止→始動が繰り返される為、更に高負荷に対する性能が求められます。充電スピードと耐久性に優れたアイドリングストップ自動車専用のバッテリーとして誕生しました。
ハイブリッド自動車用バッテリー(補機バッテリー)ハイブリッド自動車用の補機バッテリーは、エンジンの始動や電装品等に使用されます。駆動用のバッテリーが元気な状態でも、補機バッテリーがダメになってしまうと、エンジンを始動する事が出来ません。また、ハイブリッド自動車ではスペースの関係上、室内に補機バッテリーが設置される事が多い為、密閉型のバッテリーで、車外へと発生したガスを排出する機構が必要になります。
外車のバッテリー
 
外車に使用されるバッテリーは、規格が日本国内のバッテリーとは違います。サイズや取り付け方法等が違っている為、そのまま国産車→外車や、外車→国産車へは使用出来ません。現在は、一部国産ハイブリッド自動車等で、外車規格のバッテリーが使用されている事もあります。

③バッテリーの電圧の違い

12V一般的な自動車やバイクに使用される電圧のバッテリーです。2Vのセルが6つ直列に配置され、12Vのバッテリーを構成しています。
24Vトラック等の大型車に使用されるバッテリー電圧です。12Vバッテリーを直列に2個接続し、24Vとして使用します。
大型車等に搭載されているディーゼルエンジンは、その構造上圧縮比が高い為に、セルモーターを回すのに高い電力を必要とします。自動車が大型になる程、エンジンの排気量も大きくなる為、負荷が増えるので、24Vが使用されます。
6V電装品がセルモーター位しか付いていなかった頃の自動車や、そこそこ昔のバイクには、6Vが使用されていました。その頃の面影を残した6Vバイクは、まだまだ稼働している車体がある様で時々見かけます。2Vのセル3つの6Vバッテリーが搭載されています。

●電気自動車やハイブリッド自動車のバッテリー

 電気自動車やハイブリッド自動車には、大型で大容量の駆動用バッテリーが搭載されています。ハイブリッド自動車では、エンジンとバッテリーの併用になりますので、バッテリーは補助のような役割が大きくなりますが、電気自動車では完全に、駆動用バッテリーで自動車を動かしていますので、バッテリー能力=エンジンの能力になります。

 電気自動車やハイブリッド自動車が、駆動用のバッテリーと別に補機バッテリーを必要とする理由は、安全の為です。電気自動車に搭載されている駆動用バッテリーは数百ボルトの高電圧仕様のため、事故や故障の際、レッカー等応急処置に対応する人や乗員を感電から防ぐ為に、駆動用バッテリーから電気が流れ出さない様に、自動的に補機バッテリーとは切り離して安全性を高めています。

 また、駆動用のバッテリーで始動や電装等の電気系統を賄うと、故障の際に自動車の電装装置が使用出来なくなってしまう事や、もともと12Vという小さな電力で動く様に設計されている電装装置を、わざわざ駆動用バッテリーの電圧を下げて電気を送るのは効率が悪い為、電源を分けています。

 これらの自動車を購入・使用するに当たって、やはりみなさん気になるのは「バッテリーの寿命」だと思います。どの程度持つのか?交換費用はどれ位掛かるのか?長持ちさせる方法はないのか?など。自動車のタイプ別に少し見てみたいと思います。

①ハイブリッド自動車のバッテリー

 ハイブリッド自動車のバッテリーの寿命は、約15~20万Kmと言われていますが、ここ数年の車種においては、実際は15万km位からバッテリーに関するトラブルが見受けられます。約10年前、ハイブリッド自動車が本格的に出回りだした頃の車種に関しては、まだバッテリー技術の成熟度も低く、10万km以下でもバッテリートラブル等の事例も見受けられました。

 現在トヨタやホンダでは、新車から5年または10万km迄の自動車に関しては、バッテリーが寿命を迎えた場合は、保証で駆動バッテリーの無料交換を行っています。保証外での交換となった場合は10万円代後半から30万円程度が多い様です。また、リビルド(再生品)バッテリーを使用した際は、金額はもう少し抑えられます。日産の「ノートe-POWER」に関しては、駆動バッテリーへの充電用の発電装置としてのみ、エンジンを使用しています。

②電気自動車のバッテリー

 電気自動車のバッテリーは、電気自動車の核となる部分です。初期の電気自動車ではバッテリーの性能はそれほど良くはなく、初代リーフは真夏にエアコンを使用して巡航距離80km程度を記録した事があります。(実体験)

 バッテリー温度が上がると劣化の進行に繋がる為、よほど急ぎでない限り急速充電は避ける方が寿命の為には良いでしょう。急速充電はバッテリーに負荷を掛ける為、バッテリー温度が上昇します。また、真夏の炎天下で青空駐車をしている場合や、高速道路を連続走行している場合等も、バッテリー温度が上昇しやすくなります。

 リチウムイオンバッテリーは特性上、100%満充電の状態で置いていると劣化が進行する為、使用しない時は80%位で置いておく事も一法です。

  電気自動車の場合、使用出来る容量が、新品時の最大容量の70%を割るとバッテリーの寿命と言われています。多くのメーカーが5年10万km保障を付けていますが、電気自動車はユーザーの使用状況によってバッテリーの寿命が大きく変わってきます。保証外での交換となると、60万円~と非常に高額になります。中古で電気自動車を購入する際は、現状のバッテリーの劣化具合に十分注意した上で選択する事をお勧め致します。

 充電については、家庭に専用の充電設備を設置する必要があります。工事には10万円程度の費用が掛かりますし、集合住宅や借家の場合は、設置自体が難しいと言えます。

 各地に充電スポットも増えてきましたが、無料の充電スポットと有料の充電スポットがあり、有料の場合は値段にも差があります。日産では以前、月額2,000円で充電し放題の定額サービスを行っていましたが、2019年12月にサービスが改定され、月額約4,000~10,000円に変更されました。

③PHEV自動車(プラグインハイブリッド)のバッテリー

 PHEV自動車は、ハイブリッド自動車の駆動バッテリーに外部からの充電機構を装備している車の事を言います。バッテリー容量も通常のハイブリッド自動車よりも大きくなっています。バッテリー容量が大きくなっている分、モーターのみでの走行距離も伸び、疑似的に電気自動車の様な使い方をする事も出来ます。

 バッテリーの寿命は、メーカーの想定は概ねハイブリッド自動車と変わりない様ですが、実費での交換費用は、まだ市場台数が少ない上に、メーカー保証内のバッテリー交換もある事から、交換費用の情報があまりありません。

●バッテリーの交換方法

 一般的なボンネットタイプの自動車で、通常タイプのバッテリーを例にバッテリーの交換方法を簡単に紹介します。

 ※車種やバッテリーのタイプによって細かな交換方法は異なりますので、ご注意下さい。

ボンネットを開ける

まず、バッテリーを交換するのに、ボンネットを開けます。
バッテリー交換を行う際は、どこかの窓を開けておくか、キーを抜いて自分で持っているようにしましょう。

バッテリー端子の取り外し

バッテリーにはプラスとマイナスが接続されていますが、必ずマイナス側から取り外します。プラス側を先に取り外し、マイナス側がまだ接続された状態ですと、自動車全体にアースされてマイナスが流れている状態になります。その状態で取り外したプラスの端子が、自動車の金属部分の何処かに触れた場合はショートして火災や故障の原因となります。
マイナス→プラスと端子を取り外します。

バッテリーステーの取り外し

バッテリーを車体に固定しているステーを取り外します。ステーの棒やナット等を落とさないように注意しましょう。変な所に落としてしまうと、闇の彼方へ永遠にサヨウナラする事が稀にあります。

バッテリーの入れ替え

バッテリーがフリーになったら、古いバッテリーを取り出して、新しいバッテリーと入れ替えます。新しいバッテリーを入れる際、端子の向きに注意しましょう。端子のプラスとマイナスを逆に接続してしまうと、車体の大きなヒューズが飛んでしまったり、ECUがショートする等故障の原因になります。一瞬の不注意で何十万コースになるので注意して下さい。

バッテリーの設定、端子の取り付け

取り外した時と逆の手順で、バッテリーステーと端子を取り付けていきます。

各種設定をして終了

バッテリーの取り付けが出来たら、エンジンの始動を確認します。バッテリーを取り外した事によって、パワーウインドのオート、オーディオの設定、時計等がリセットされているので、これらを再設定します。設定が終われば、バッテリー交換は終了です。

①バックアップの必要性

 一部のカーナビ等では、バックアップを行わずにバッテリーを取り外すと、故障する事もありますので注意が必要です。昔はエンジンを掛けたままバッテリーを交換する事によって、疑似バックアップの様な方法も取られましたが、現在の自動車は色々な部分に電子制御が介在しているので、この方法は故障の原因となるのでやめましょう。

 シガーソケットや、バッテリー端子に接続する事によって、各種設定がリセットされない様にしながらバッテリー交換が行えるバックアップツールがありますが、バックアップツールを使用した場合でも、途中でバックアップツールの電池が切れる場合や、しっかり接続していてもバックアップ出来ていない事が稀にありますので、過信は禁物です。

②リセット作業とバッテリーの登録

 一部車種においては、バッテリー交換の際に所定の手順に従って、リセット作業を行う必要があります。

これを行わないと、アイドリングストップや充電制御のシステム等に制限が掛けられ、正常に作動しなくなります。車両側のスイッチ操作で出来る場合もありますし、診断機を接続して操作する場合があります。また、一部外車においては、専用診断機を接続して、バッテリー交換の情報を登録しなければいけない車種があります。こちらも上記と同様に、登録作業を行わないと、機能に制限が掛かった状態になります。

③学習値がリセットされてしまう場合

 バッテリー交換やバッテリー上がり等によって、ECUやスロットルボディの学習値が初期化されてしまい、エンジン等が不調になる場合があります。この場合は、初期学習をやり直す必要があります。

④一部ハイブリッド自動車のバッテリー交換注意

 トヨタのリアシートの下に補機バッテリーが搭載されているタイプ、アクアやカローラフィールダー等ですが、実はバッテリーが搭載されているのと反対側に、バッテリー冷却用のファンが搭載されています。

ここのファンのフィルターがよく目詰まりを起こして、バッテリーが冷却不良になって警告灯が点灯します。バッテリー交換を行った際は、こちらのフィルターも清掃する様にしましょう。現行モデルでは、フィルターの形状が少し変わって、多少目詰まりを起こし難くなっています。

●バッテリーが上がってしまったら

 バッテリー上がりの原因として、オルタネーターの発電不足・バッテリーの不良・電装品やライトの消し忘れや漏電によるバッテリー消費が蓄電量を上回った時にバッテリー上がりが起こります。ジャンピングスタート(他の車から電気を分けてもらう)等、応急処置でその場を凌ぐ事が出来ても、あくまで応急処置になりますので、原因を突き止めると共にバッテリーを交換しましょう。一度上がってしまったバッテリーは痛んでしまうので、早めに交換する事をお勧めします。

 バッテリーが上がってしまった時の対処法として、ロードサービスに救助の要請をするのも一つです。それ以外には、他の車(救護車)から電気を分けてもらう(ジャンピングスタート)、バッテリーパック等を利用する(ジャンプスターター)という手段がありますので、以下に起筆致します。

①救援車(他の車)を利用する場合

 救援車を利用し、ブースターケーブルでバッテリーをジャンプさせて始動する方法です。バッテリージャンプを行う場合は、必ず同じ電圧同士(12Vと12Vまたは24Vと24V)の自動車で行いましょう。また、救援車側のバッテリーが対象車より小さいと、救援車側のバッテリーが上がってしまう場合がありますのでご注意下さい。

ジャンピングスタートの手順

救援車と対象車のバッテリーをブースターケーブルで接続します。

・順番は対象車のプラス→救援車のプラス→救援車のマイナス→対象車のマイナスの順番でケーブルを接続します。

接続出来たら、救援車のエンジンを始動します。

1~3分程待ってから、対象車のエンジンを始動します。

・対象車の状況によって、始動できない場合は、救護車のエンジン始動時間を伸ばしてからチャレンジするか、救護車側で少し回転数を上げて対象車を始動します。

対象車が始動したら、ケーブルを取り外します。

※ハイブリッド車は車の構造上、他の車(エンジンモデル車)のバッテリー上がりを救護する事が出来ません。その逆は可能です。

 電気は強い方から弱い方へ流れる性質がありますので、相手のエンジンがかかった瞬間に大量に流入してきた電流でハイブリッドシステムや電気系統が故障する恐れがあります。

②バッテリーパック等を使用する場合(ジャンプスターター)

 ポータブルのバッテリーパック等を利用してジャンピングスタートする事をジャンプスターターと言います。カー用品店で簡単に購入する事が出来、バッテリーのプラスとマイナス端子に接続してエンジンを始動するだけのタイプが多いので初心者でも簡単に操作する事が可能です。モバイルバッテリーとして使用する事も出来ますので、車載しておくと便利なアイテムの一つですが、充電容量が低下しているといざという時に始動出来ない事もありますので注意しましょう。

●バッテリーのメンテナンス

 バッテリーは使用しなくても放電していますので、長期間使用しないと性能が低下します。3か月に1回はバッテリー液の補充や充電等、メンテナンスを行う必要があります。メンテナンスを行う事でバッテリーを長持ちさせる事が出来ます。

①バッテリー液の点検と補充

 解放型のバッテリーや、MFタイプのバッテリーでも蓋が取り外せる物は、バッテリー液の点検と補充を行う事が出来ます。LOW(最低液面線)とUPPER(最高液面線)の間に液面があればいいのですが、補充する場合は、多すぎるとあふれる可能性があるので注意をします。

 バッテリー液の位置がLOWとUPPERの間にあっても、半分以下の場合は補充をしましょう。専用の精製水を使用して、電解液の濃度と液量を適量に戻します。水道水はカルキなどの不純物が極板に付着して局部電池となってしまい、外に電気を取り出す事が出来なくなるので使用できません。また、バッテリー液は希硫酸の為、もし手や体等についた場合は、すぐに水で洗い流しましょう。

 このタイミングで、バッテリー液の比重を見れるのであれば、比重計を使用して確認します。一般的にバッテリーは、完全充電状態での比重は1.28(常温20℃)です。1.25位あれば大丈夫ですが、1.24を下回る場合は充電不足や劣化している可能性があるので、充電や交換が必要になります。

②バッテリーの充電

バッテリーの電圧が低い場合や、長期間使用していなかったバッテリーは、バッテリーチャージャーを使ってバッテリーの充電をします。状況によっては充電をしてもバッテリーが復活しない場合もあるので、その場合は交換しましょう。

バッテリーを自分で充電する

接続出来たら、救援車のエンジンを始動します。

バッテリー充電器(普通乗用車の場合は12V)とブースターケーブルを準備し、コンセントがある位置に車を移動させます。
車のボンネットを開け、バッテリーを確認する
バッテリーの⊕極(赤)に赤いケーブル、⊖極(黒)に黒いケーブルを繋ぎます。
充電器をコンセントに挿し、電源を入れる。説明書に従ってアンペア数等を設定する。
バッテリー電圧と充電量を確認し、充電量が90%を超えたら充電完了。

 他にも、走行する事によって充電する事が可能です。時速50~60kmで30分~1時間程度走行する事でオルタネーターから供給される電気でバッテリーを充電する事が出来ます。但し、劣化したバッテリーでは、これらの方法でも充電する事は困難ですので、交換をお勧め致します。

 また、充電器を持ち合わせていない場合等は、私共自動車整備工場にお声を掛けて頂ければ、充電する事が可能です。料金は発生しますが、バッテリーの状態を診断をする事も出来ますので、バッテリーの事でお困りの事がございましたら是非お問い合わせ下さい。

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●まとめ

 

 先にも述べましたが、バッテリーは車には欠かす事が出来ません。ハイブリッド自動車等の駆動バッテリーは非常に高価な上に、ユーザーの使用状況によって状態が大きく変わってきます。また普段使用する補機バッテリーも正しく管理する事で長持ちさせる事が出来ます。バッテリーの事を知り、バッテリーを大切にする事が、お車を大切にする事に直結します。バッテリーは、快適で楽しいカーライフの縁の下の

力持ちと言えます。

 たまにしか運転しない、短距離走行を繰り返す事が多い、または高温化で使用し続ける、ライト点灯等電気負荷がかかった状態で放置してしまった、等使用次第によっては、バッテリーの寿命が短くなったり、放電してしまうケースに繋がります。定期的に自動車を走行させたり、バッテリーの状態を確認する等、バッテリーの健康にも少し心配り頂きく事で、バッテリートラブルを回避する事が出来ます。

 エンジンがかかりにくいな、ヘッドライトが暗い気がするな、パワーウィンドの開閉が遅い気がする、またはバッテリーを見た時に液が減ってる、本体が膨らんでいるように見える、等異常や違和感を感じられましたら、弊社までご相談ください。