「車検が切れてしまった車」の車検

 本来なら、車検が切れる前に受検して更新しますが、何らかの事情で車検が切れてしまった場合、その車がもう一度車検を受ける為には何をどうすればいいかご存じでしょうか。今回は、車検が切れた状態からの車検について詳しくお話していこうと思います。

●車検切れの自動車を動かしてもいいの?

 車検証の有効期限が切れた自動車は、道路運送車両法に違反している車として扱われる為、公道を走る事が出来ません。

 ではここで公道とは?具体的には「公共の用に供されていて国や地方自治体等が管理している道路」を指します。高速道路(高速自動車国道)や国道、都道府県道、市町村道等がこれに当たります。

 車検が切れた車を運転すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という重い処分が待っています。そして行政処分として違反点数が6点加算されますので、過去3年間に行政処分歴が無かったとしても、30日間の免許停止処分になります。

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●車検切れになる理由は?

 では、どうして車検切れを起こしてしまうのでしょう?

 理由は様々でしょうがよくあるのは、単純に「多忙」。車検の有効期限迄に手続きを進められなかったケース。次に「うっかり」。そして「乗る予定があまり無く気が付いたら切れていた」というケース。意図せずという場合もあるでしょうが、敢えて車検を受けていないという方も少数ですがいらっしゃいます。

 日頃から、ディーラーや整備工場と付き合いがあるユーザーさんは、「車検のお知らせ」を受け取った事がおありではないでしょうか?そう言ったお付き合いが無いユーザーさんは、車検ステッカーや車検証等を自分で意識してチェックし、把握しておく必要があります。そうしないと「うっかり」が発生してしまいます。

 また普段車にあまり乗らないからと車検が切れたままにしていて、それをご家族が知らずに自動車を使用してしまったというパターンもあります。
 他にもゴールデンウィークや夏休み(盆休み)等の大型連休近くで車検満了日を迎えるユーザーさんにしばしばみられるのが、直前になって車検の手続きをするも、メーカーが休みに入っていて部品が間に合わない、または運輸支局等が休みで手続き出来なかったパターンです。

 全国では約20万台の車が車検切れの状態で走っていると言われています。故意なのか、うっかりなのかは別にして、今では「ナンバー自動読取装置」により車検切れ車両は瞬時に把握されます。先程も起筆しましたが、車検切れで取り締まりを受けた場合思い処罰が待っています。
 車検は「面倒」だとお感じになるかも知れませんが、何かあってからでは“後悔先に立たず”です。意識して、上手にお車と、そして車検とお付き合いされる事をおすすめ致します。

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●車検が切れた自動車の車検

 車検が切れた自動車の車検はどの様に進めれば良いのでしょうか?車検が切れている車は公道を走る事が出来ません。単純に移動させられないという事になります。「面倒な事になったな」と感じるかも知れませんが、車を移動させる事が出来たら、その後の流れ(車検)は本来の形と同じです。

 では、移動手段について以下に起筆したいと思います。

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●車の移動

◇仮ナンバーを取得して自分で移動させる

 自分で移動させる場合は、一番簡単で確実な方法は「仮ナンバーを使用する」事です。仮ナンバーとは「自動車臨時運行許可」の事を指し、車検切れ自動車が継続検査を受ける為に運輸支局等に移動させる為の特例許可です。他にも、未登録自動車の新規検査・登録時にも仮ナンバーは使用されます。

 なお、仮ナンバーが許可される対象車は、普通自動車・小型自動車・軽自動車・大型特殊自動車・二輪の小型自動車(250cc以上)になります。

【仮ナンバーの申請(取得)方法】

仮ナンバーは各市町村の役所で申請します。

<申請に必要な書類等>

  1. 自動車臨時運行許可申請書(役所の窓口でもらえます)
  2. 車検証または登録事項等通知書
  3. 申請期間内に有効な自賠責保険証の原本 (仮ナンバーから1か月以上有効なもの)
  4. 印鑑(認印)
  5. 本人確認書類
  6. 手数料(750円)

仮ナンバーを取り付ける。

仮ナンバーは、車の前後のナンバープレートの上から取り付けます。片方のネジだけ取り付て、あとは養生テープ等固定してもOKです。

ただし、面倒だからとフロントガラスやリヤガラスの見えやすいところに置いておくだけでは、取り締まりを受ける可能性がありますので注意しましょう。「臨時運行許可証」は必ずダッシュボードの上に置いておきます。

運輸支局等に向けて出発です。

自賠責保険について

 自賠責保険については、申請時点で有効期間が残っていればいいのですが、車検切れの場合自賠責も切れている事も珍しくありません。

 自賠責保険は、最短1か月から加入出来ますが、加入期間が短くなるとかなりの割高です。車検を受ける際にも、車検期間中に有効な自賠責保険が必要になりますので、仮ナンバーの申請からすぐに車検を受けられる場合は、25か月で加入するほうが断然オトクになります。

 以下に「仮ナンバーの注意点」を起筆致しますので、注意して下さい。

仮ナンバーの注意点

仮ナンバーの申請時には、使用目的も記入しますが車検を通す為の正当な理由で無ければ許可されません。仮ナンバーをつけた状態で申請時に記入した目的以外で車を利用する事はNGです。







仮ナンバーの申請は、その自動車の運行経路が含まれる(運行経路上にある)市区町村役場で申請します。経路上であれば、出発地や目的地でなくてもOKですが、経路に全く関係のない市区町村では申請出来ません。逆を言えば、仮ナンバーを付けた車が走れる道路は「申請手続きの際に記入した経路のみ」になります。

仮ナンバーの申請は、仮ナンバーを使用する当日または前日に手続きします。

仮ナンバーの有効期限は最長5日間で、そこには土日祝も含まれますし、必要最低限の日数が原則の為、車検の日時等予定をしっかり決めた上で仮ナンバーの発行申請をしましょう。


◇依頼して移動してもらう

 陸運業者等に依頼して輸送してもらう方法です。ただし、車検が切れている旨をちゃんと説明しておかなければいけません。積載車であれば問題ないのですが、レッカー車の場合は、車検切れの自動車を搬送すると違法となってしまう為、業者によっては断られるケースもあります。

 整備工場等でしたら積載車を持っている事が多いので引き取りに対応してくれるでしょう。それに整備業者でしたら「運搬+車検手続き」で一石二鳥ではないでしょうか。

 JAFに加入している場合は、JAFを利用しようと考えるユーザーさんもいるかと思いますが、JAFでは車検切れの自動車は搬送出来ません。JAFだけでなく自動車保険のロードアシスタント特約では、車検切れの車を運搬する(動かすこと)は出来ない事が殆どです。

参考:JAFロードサービス(お断りするケース)はこちら

 https://jaf.or.jp/common/about-road-service/contents/eligible-vehicles

◇使用出来ない移動手段

 先にも少し起筆しましたが、残念ながらレッカー車では車検切れの車を移動させる事は出来ません。レッカー車で車両を運ぶ際には、前輪は吊り上げられて浮いていますが、後輪は地面に接地して回転しています。この状態は、公道を走っているのと(自走と)同じと解釈される為、無車検運行になってしまい違法になります。

 また、「友達に頼もう!」と軽い気持ちで自動車のけん引をお願いするのもNGです。理由はレッカー車と同じです。自走とみなされ無車検運行になります。

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●うっかり車検切れの自動車でトラブルを起こしてしまったら

 意図せず車検が切れてしまい、気付かずに自動車を運転してしまった時に、トラブルが発生してしまったらどうなるのでしょう?

 まずは「無車検運行で検挙される」という事でしょうか。きっかけが軽微な事(例えばシートベルトの装着違反等)であっても、車検ステッカーを見れば無車検である事が一目でわかってしまいます。他にも貰い事故の場合で、事故そのものは自分に過失が無くても、事故処理の中で無車検である事が発覚しますので検挙されます。事故を起こしてしまった時はもっと悲惨です。まず、無車検運行で検挙されます。そして、相手の体や自動車等に関しては、任意保険から補償が降りる場合もありますが、一部では車検切れの間は補償しないとなっている保険会社もありますので、注意が必要です。
 また、相手への賠償については補償されても、自身の搭乗者保険や車両保険などについては、補償されない場合が殆どです。

 車検切れは故意では無かったとしても、事故を起こせば「この車を運転して帰ってはいけない」と言われますし、その為の手配も必要になります。事故の度合いによっても変わってきますが、自賠責が切れていれば、無車検の上に無保険の懲罰も課せられます。事故を起こして、自賠責も任意保険も使えなければ数千万単位の賠償金を背負わなければいけなくなるかも知れません。車検切れの車に乗ってプラスになる事は一つもありません。「後悔先に立たず」にならない様、今一度車検の有効期限を確認してみて下さい。

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●車検切れの自動車の保管

 「車検切れちゃったな、どうしようかな」と思われた時、このままにしておくか(保管)、思い切って廃車にするか、迷うところでしょうか。もちろん「今回はうっかりで車はずっと乗るから必要!」と仰る方は、再受検されるのがいいでしょう。しかし中には「もう乗らないけど、愛着が無いわけじゃない」等と思ってらっしゃる方もいらっしゃるはず。そんな時は・・・。

バッテリーを外しておく自動車に乗っていないと、バッテリーは充電されません。「自動車使ってないんだからバッテリーも消耗しないんじゃないの?」と思われるかも知れませんが、細かいバックアップ等で、常時バッテリーの電気を少しずつ使用しています。その為、バッテリーを外しておかないと、バッテリーが完全に放電してしまい、激しく劣化してしまいます。長期間自動車に乗らない場合は、バッテリーを外しておき、出来れば定期的に充電を行うことが好ましいです。
タイヤの空気圧を高めにしておく自動車に乗らない場合でも、タイヤの空気は少しずつ減っていきます。空気圧が低くなると、タイヤが変形した状態になり、傷んでしまいます。
また、規定圧の空気が入った状態でも、長期間動かさないと、車重で少しだけ凹んでいる面が、変形してそのまま跡になってしまう場合があります。こうなると走行した時の振動等の原因になります。
空気圧は高めに調整しておき、出来れば定期的にタイヤの接地面を変えることが望ましいです。
ガソリンを満タンにしておくガソリンは、時間が経つと劣化します。保管は3~6か月程度が一般的に限界と言われており、それを過ぎるとガソリンが変質して傷んでしまいます。傷んだガソリンは、燃焼しにくくなる他、変質してガソリンの経路などを詰まらせたり不具合が発生することもあります。また、ガソリンは空気に触れている割合が大きいほど劣化しやすくなり、ガソリンタンク内部もガソリンが少ないほど錆び等が発生しやすくなる為、なるべく満タンにしておくのが好ましくなります。ただ、問題はガソリンも変質して傷む前に入れ替える必要があるという事です。
車内の換気をする特に梅雨の時期や台風シーズンなど、乗っていない自動車を置いておくと、湿度が上がって車内がカビ臭くなる事があります。良く晴れた日等に窓やドアを開けて、車内の換気をしてあげるといいでしょう。何処かにカビが発生して、一度車内がカビ臭くなってしまうと、臭いを取りきるのは非常に難しくなります。
サイドブレーキを解除しておく長期保管になる場合は、輪留めを掛けるなどしてサイドブレーキを解除しておくことをおすすめします。長い間サイドブレーキを掛けっぱなしにしておくと、ブレーキが貼り付いて転がらなくなる事があります。サイドブレーキを解除しておく事に抵抗がある人は、定期的にちょっと解除して貼り付いていないか確認しておくのが良いでしょう。また、解除する場合は、必ず輪留めを掛けておくようにしましょう。
暖気が終わるまでエンジンを掛けるよく「たまにはエンジンを掛けろ」と耳にすることがあると思いますが、ちょっと掛けてすぐに止めてしまうと逆効果になります。出来れば1か月に1度はエンジンを掛けておきたい所です。エンジンを掛ける場合は、いきなりエンジンを掛けるのではなく、クランクシャフトを工具などを使って何度か回してからエンジンを掛けるのが好ましいです。
長期間エンジンを掛けていないと、エンジン内部のエンジンオイルが下に落ち切ってしまい、油膜が切れた状態になります。この状態からいきなりエンジンを掛けると、エンジンを痛めてしまう可能性があるので、何度か手で回してエンジンの内部にオイルを廻してあげることで、油膜を復活させる事が出来ます。エンジンを掛けてからも、水温系の針が上がって安定して電動ファンが回るまでは掛けておくようにしましょう。
ついででガソリンの入れ替えに、少なくなるまでエンジンを掛けておこうと思う人も居るかもしれませんが、アイドリングでガソリン減らそうと思うと相当な時間が掛かってしまうので、おすすめはしません。
出来れば屋内保管をする可能であれば、青空でなく車庫やシャッター付きガレージなどで保管することをおすすめします。雨風によるボディの劣化等遅らせる事が出来ますし、日光の紫外線等でも、室内のシートが色褪せたり、樹脂部品等が劣化してしまいます。
青空保管でも、カバーを掛ければ多少はマシにはなりますが、風等でカバーが擦れて付く小傷等は避けられないので、綺麗な状態で保管したい場合は屋内で保管しておきましょう。屋内である程度気温と湿度が一定に保てると最高なのですが、現実的には難しいと言わざるを得ません。

 車は乗っていないと(放置していると)どんどん劣化していきます。自動車の劣化を進行させない為、もしかしたらもう一度車検を受けるかも知れないその日まで、少しでもいいコンディションで自動車を保管する為に、出来る範囲の対策をやっておきましょう。

 それでも、「やっぱり廃車かな、でも迷うな」そんな時は・・・。

ナンバーそのままで保管車検を受けないでそのまま保管しておくことも可能です。この場合は、自動車に乗っていなくても、毎年4月になると自動車税が課税され、税金を支払う必要があります。
ナンバーをそのままにしておくメリットとして、以下のような点があります。
①ナンバープレートの変更がない。
②古い自動車やバイクの場合、新規検査の方が継続検査よりも厳しい項目があり、車検を再取得するのが容易な場合がある。
デメリットとしては、自動車税の支払い義務が毎年発生する事でしょうか。
一旦廃車にする場合ナンバーを返納して登録を抹消し、一旦廃車にして保管する方法です。
最大のメリットは、自動車税が掛からない点です。保管に掛かるランニングコストが駐車場代のみになるので、持ち家で自宅に駐車場がある場合は実質タダです。
デメリットとしては、再び車検を取って登録する際にナンバーが変わってしまう点と、上記の逆で、古い自動車などは新規登録でどうしても引っ掛かる項目が出てしまう点です。
また、再度登録して車検を取得する時に、様々な手間や時間などが掛かってしまう点もデメリットと言えるでしょう。

 車検切れの状態で、保管する場合は、任意保険を停止する事が可能です。その際は「中断証明」を発行してもらいます。そうする事で次また車検を取得して任意保険に加入する場合に保険の投球を引き継いで契約する事が可能です。

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●保管状態から車検取得の準備

保管状態から再び車検を取得する場合、どのような準備が必要になるのでしょうか?

ナンバーそのままで保管していた場合手続き的には継続検査になる為、通常の車検と変わりません。
車検期間は、車検を受けた日から1年又は2年の期間になります。
整備工場等へ運ぶ際や検査を受ける時に、通常に比べて、多少手間と費用が掛かりますので注意が必要です。
一旦廃車にしている場合一旦廃車にした自動車の車検を再び取得する為には、再登録を行ってナンバーを取得しなければいけません。この場合は、新車や中古車等を新しく購入した際と同じ手続きが必要になります。
まず、車庫証明を用意する必要があります。また業者などに依頼する場合は、委任状等も必要です。車庫証明の取得や、各種手続きに加え、長期間自動車を動かしていない場合は整備等、通常の車検よりも時間が掛かる為、自動車を使う予定がある場合や、仮ナンバーを申請する時は余裕を持ってスケジュールを組んでおく必要があります。

 この場合に、具体的に必要な書類は、

  • 車庫証明
  • 実印(普通車)
  • 認印(軽自動車)
  • 印鑑証明(普通車)
  • 委任状
  • 登録識別事項等通知書
  • 自賠責保険
  • 住民票(軽自動車)

になります。

 一度車検が切れてしまうと、車を動かす事が出来ず、手間(時間)もお金もかかります。事情があってやむを得ない場合もあるかと思います。そんな時はどうぞ弊社にご相談ください。お客様にとってより良いプランをご提案させていただきます。