門真の整備士が語る「車検に落ちる原因」

 自動車を所有していると、定期的に必ずやって来るのが車検です。車検時に「〇〇を換えないと車検に通りません」と言われた経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 では、具体的に「車検に落ちる原因」とはどの様な時なのでしょう?今回は車検で落ちる原因を見て行きたいと思います。

●車検に落ちる原因

 車検とは、自動車の法定点検の事を指し、規定の保安基準を満たしていなければなりません。故障等で何某か不具合がある場合や、改造等によって車が安全に走行出来ない時に、保安基準に適合していないと見なされ車検に落ちてしまいます。

 では具体的にどのようになれば保安基準に満たしていない事になるのでしょうか?要所要所で見てみたいと思います。

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●自動車の根本的な部分や外観などの原因

 エンジンやフレームなどの根本的な部分や、外観等が原因で車検に落ちる場合です。

車体番号が不鮮明車台番号は車の戸籍に当たるものなので、錆びや腐食等で車体番号が不鮮明な場合には、自動車の同一性の確認が取れない為車検には通りません。
この場合、国から新しい車体番号を発行して貰う「職権打刻」と呼ばれる手続きが必要になります。
エンジンの型式が違うエンジンの型式が車検証と同じ物であるかどうかを確認します。
エンジンの換装や改造等を行って、エンジン型式や排気量が変わっている場合は、構造変更申請を行う必要があります。
ミッションの形式が違うAT→MTなどにミッションの換装を行った場合でも、構造変更申請が必要になります。

「車検証にミッションの記載はないからバレないんじゃないの?」と思う人もいると思いますが、検査官は見ていますので、ちゃんと構造変更申請をしましょう。
フレームやボディーに著しい腐食がある場合フレームやボディーなどに著しい腐食があり、穴等が開いてしまうと車検には通りません。
ガラスの不具合ガラスにヒビや割れがある場合は、車検に通りません。小さなヒビの場合はガラスリペア等を行って車検に通す事は可能ですが、大きなヒビや割れがある場合はガラスを交換しなければなりません。
また、フロントガラスには車検証票と法定点検のステッカー以外貼る事は出来ません。
吸盤等でフロントガラスに貼り付けるタイプの後付けアクセサリーやドライブレコーダー等も、車検には通りません。また、フロントガラスの上部にスモークやステッカー等を貼る、通称「ハチマキ」と呼ばれる物がありますが、スモークの場合は基準が決まっており、基準外は車検に通りませんし、ステッカータイプに関しては議論の余地はありません。
フロントガラスと、運転席助手席の窓にフィルム等を貼り付けている場合も車検に通りません。基準で透過率が決まっている事に加えて、最近の自動車はUVカット等のガラスが使用している為、例え透明なフィルムを貼った場合でも、ほとんど車検には通らなくなります。
灯火類の不具合灯火類に不具合がある場合も、車検は通りません。
点灯しないランプがある、レンズが割れて光が外に漏れている、ウインカー等がハイフラッシャーななっている、後付けのフォグランプ等が基準外の取り付け方法で取り付けられている、基準外の色のランプが使用されている場合等を指します。
灯火類は全て細かく基準化されていますので、勝手に改造したり増やす事は出来ません。
自動車のサイズなどが変わっている場合自動車のサイズが車検証のサイズと変わっている場合(全長3cm、全幅2cm、全高4cm以上変わる場合)は、構造変更申請をする必要があります。
最低地上高も9㎝必要ですが、樹脂製エアロ等を装着している場合は、5cm以上であれば問題ありません。但し、エアロに灯火類等が設置されている場合は9cm以上必要になります。
オーバーフェンダー等を装着した際も、全幅2cm以上は構造変更が必要になります。
具体的には片側9mmまでのオーバーフェンダーならそのままで問題ありません。
リフトアップやローダウン等で全高が変わっている場合も、4cmを超える様であれば構造変更が必要になります。
リアスポイラーやウイングを取り付ける場合は、車体の最後部よりはみ出しておらず、これらの最外部が車体の最外部よりも165mm以上内側にあり、ボディと翼端の隙間が2cm以下であり、鋭利な部分がなく安全な形状である事と決められています。
ナンバープレートが適切に取り付け表示されていない場合ナンバープレートも、保安基準に沿って適切に取り付けと表示を行う必要があります。
横向きに見やすく表示され、カバーは透明でも装着してはいけませんし、ナンバーフレームも文字に掛かる様なものは装着出来ません。
折り曲げたりしてもいけませんし、表示の角度等も細かく規定されています。
ワイパーが切れている場合ワイパーが劣化して千切れている場合にも車検は通りません。
そんな所まで見てるの?と思われそうですが、意外と見られているんです。

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●点検の種類と点検内容、点検を行うタイミング

 車内に様々な装備があり、これらに不具合があると車検に通りません。

レバースイッチ類の表示がされないハザードランプやホーンボタン等、各レバーやスイッチ類の表示が正しくされていない場合は車検に通りません。
メーターが正しく表示されていない場合メーター内の各警告灯がきっちりと点灯しない場合や、ATやCVT車の場合はシフトのポジションランプが切れている場合等も車検に通りません。
発煙筒が積載されていない場合発煙筒が設置されていない場合は車検に通りません。もし、使用した場合は、新しい発煙筒を補充して設置しておくようにしましょう。
ホーンに不具合がある場合ホーンがちゃんと鳴らないとNGです。音量等も基準で決まっており、残響があるものも車検に通りません。
ウォッシャー液が出ないウォッシャー液が出ない場合も車検に通りません。スイッチやウォッシャーの機構に問題がある場合や、単純にウォッシャー液切れの場合でもNGです。
シフトパターンが無いMT車の場合は、シフトパターンの表示が無い場合、車検に通りません。
紙に手書き等ではダメで、純正のシフトパターンやパターンバッチを設置しておく必要があります。
車内からの視界を妨げる物が設置されている場合オンダッシュタイプのナビが設置されている場合等、規定された視界を妨げる場合は車検に通らない事があります。
「前方2mにある高さ1m直径0.3mの円柱を鏡等を用いずに視認出来る事」と規定されています。
車内に突起物などがある場合衝突の際に頭や体等をぶつけて、危険が及ぶ事が考えられる場合もNGです。
厳密にはエアコンの吹き出し口に取り付けるタイプのドリンクホルダーなども該当しますが、これで落ちた例はあまりありません。
よくあるのは、ダッシュボードテーブル等を装着している場合です。両面テープ等で、衝撃が加わった際に脱落する様な簡易な取り付けをされている場合はOKですが、ボルト等で固定されている場合は車検には通りません。
シートに不具合がある場合シートが破れる等して、中身のフレームなどが露出している場合は車検には通りません。ヘッドレストの装着は必須で、ヘッドレスモニターを装着している場合は原則車検に通すことは出来ません。
社外のシートに交換している場合も、注意が必要です。交換するシートが保安基準に適合している物でない場合は勿論車検に通りませんし、フルバケットシートの場合、乗車定員2名以上の自動車に装着する場合は、シートの後ろ側のシェルに後部の乗員保護の為のカバーが付いている必要があります。
シートを交換する場合は、シートレールから交換が必要になりますが、シートレールも保安基準に適合した物を使用する必要があります。

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●タイヤ廻りに不具合がある場合

 タイヤの状態や取り付けに問題がある場合も車検は通りません。

タイヤの溝がない場合車検時の基準として、タイヤの溝が1.6㎜以上無いと車検には通りません。タイヤに設定されているスリップサインが完全に露出した状態が1.6㎜になるので、スリップサインが出ている場合はタイヤを交換する必要があります。
タイヤの荷重指数が足りない場合タイヤには荷重指数(規定の条件下でそのタイヤが支える事が出来る最大負荷能力を示す数値)が設定されています。自動車の最大積載量を支えられるタイヤを装着していない場合は、車検には通りません。
タイヤが車体からはみ出しているタイヤは、中心部分から前30度、後ろ50度までの部分は車外にはみ出してはいけない事になっています。最外部が「タイヤ」の場合に限り、突出量が10㎜以下であれば車検には通りますが、最外部が「ホイール」の場合や、10㎜以上はみ出している場合はNGです。
規格外のホイールを装着しているホイールにも車検に適合する規格があり、乗用車の場合は「JWL」、貨物車の場合は「JWL-T」マークが入っているホイールである必要があります。それ以外のホイールを装着している場合は車検に通りません。

ホイールナットが緩んでいる場合ホイールナットがちゃんと閉まっておらず、緩んでいる場合にも車検に通りません。
タイヤがフェンダーハウスなどに接触している場合タイヤがフェンダーハウス内等に接触していると、車検に通りません。
タイヤが真っすぐの状態でショック等が縮んだ場合や、ハンドルを切った時にどこか一部が接触する場合等もNGです。
番外編、純正から著しくサイズの違うタイヤを装着している場合インチアップ等で、純正のタイヤホイルからサイズが変わっている場合、タイヤの外径が純正時と変わらない様に計算している場合は問題ありませんが、外径が著しく異なると、車検に落ちる可能性があります。
スピードメーターの検査の際に、テスターで測定した実際の速度と、自動車のスピードメーターの表示速度の差が検査されるのですが、タイヤの外径が変わってしまうと、スピードメーターの誤差もその分大きくなり、基準外になってしまうので車検に落ちてしまいます。

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●走行に必要な基本的な機能に問題がある場合

 車に備わった基本的な機能<走る・止まる・曲がる>に問題がある場合は、車検に通りません。

ブレーキに不具合がある場合ブレーキに引きずりが発生している場合や、基準値以上の制動力が出ない場合は車検に通りません。
また、ブレーキオイルの漏れや、ブレーキホース・パイプに損傷がある場合も車検に通りません。
アライメントに問題がある場合車検では、スリップと呼ばれる直進した時にタイヤがどれだけ横滑りしているかを測定する検査があります。1m直進する間に5㎜以上の横滑りがある場合は不合格となりますが、アライメントが狂っている場合等は、簡単にこれを超えてしまう為、適切に調整する必要があります。
ヘッドライトに問題がある場合ヘッドライトの検査では、光量、光軸が検査されます。
明るさが基準に不足している場合は車検は通りませんし、逆に明るすぎても通りません。適切な方向を照らしている事と明るさの両方をクリアしていないと車検には通りません。レンズが曇っていたり傷が多い場合には明るさが出ない事もありますし、事故等の影響で適切な方向にヘッドライトが向かない事もあります。
スプリングやショック等に問題がある場合スプリング等は交換しても問題はありませんが、腐食等で損傷している場合や、遊び等がある場合は車検に通りません。
ショックも、オイル漏れ等があると車検に通らなくなります。リーフスプリング等を装着している自動車の場合、社外品等に交換した時は構造変更申請が必要になります。
マフラーに問題がある場合マフラーに腐食等で穴が開いてると車検に通りません。
車外マフラー等に交換している場合では、音量等が基準値以内でないと車検に通りません。
排気ガスに問題がある場合排気ガスも基準の数値内でないと車検に通りません。
年式によって基準が異なります。
各液体に漏れがある場合オイル・冷却水・燃料等、各液体の漏れがある場合も、車検には通りません。滲み程度なら通る事もありますが、雫になって下へ落ちるようでしたらNGです。燃料は少しでも漏れていてはいけません。
ブーツ類に破れがある場合各ブーツ類に破れや損傷がある場合も車検に通りません。針の穴のような小さな破れでも、中のグリスが出ている場合はNGになります。
具体的には、ドライブシャフトブーツ・アッパーアームボールジョイントブーツ・ロアアームボールジョイントブーツ・タイロッドエンドブーツ・ステアリングラックブーツ・スタビリンクロッドブーツ
等があります。
下廻りのボルト等に緩みがある場合自動車の下廻りのサブフレームや、足回りの部品等の取り付けボルトに緩みがある場合も車検に通りません。
割ピンが入っていない場合足回り等の各ナットには、周り止めの割ピンが入っている事がありますが、この割ピンが入っていないと、車検に通らなくなります。

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●改造によって通らない場合

 自動車の改造をした事によって車検に通らない事もあります。構造変更申請等をすることによって車検が通る場合もあれば、根本的にどうやっても通らない車まで様々です。

社外品のブローオフバルブを取り付けた場合ターボ車の場合は、余剰圧力がタービンへ逆流してタービンを痛めない様に、圧を逃がす為のブローオフバルブが装着されています。
純正の場合は、圧を吸気側へ逃がす構造のブローオフバルブが装着されていますが、圧を外へ逃がす大気開放タイプ(社外品)を装着すると車検に通りません。
社外品でも、吸気側へ逃がすタイプのバルブを装着すれば問題なく車検に通ります。
ウエストゲートを大気開放にしているウエストゲートはターボの過給圧を制御している部品ですが、マフラーに接続して圧を逃がす必要があります。これを、マフラーへ戻さず大気開放にしていると車検に通りません。
取り付けるマフラー等によっては、リターン用のパイプが付いていないものもありますので、対応の物に換えるか、ワンオフで制作する必要があります。
アーム類を社外品に交換した場合足回りのアーム類やタイロッドエンド等を社外品に交換した場合は、構造変更申請が必要になります。
触媒を交換した場合純正の触媒をスポーツ触媒等に交換した場合は、構造変更申請が必要になります。根本的に触媒を撤去して直管にしている場合は車検に通りません。
ハンドルを交換した場合ハンドルの交換自体は車検には問題ありませんが、メーターが視認出来ない様な形状・大きさのハンドルの場合は車検に通りません。
また、警告灯が点灯していると車検に通らなくなる為、社外ハンドルに交換してエアバッグが無くなった場合は、警告灯が点灯しないようにする必要があります。
バッテリーを移設した場合エンジンルームから室内等にバッテリーを移設した場合は、車検に通らない事があります。
バッテリーを室内に設置するには、バッテリーをケースに入れる等して、社外へガスを逃がす機構を作る必要があります。
そのまま移設してバッテリーだけを設置しただけでは、車検には通りません。
コレクタータンクを設置した場合コレクタータンクを設置する場合には、トランクや室内に設置する事が多いですが、隔壁などで囲い、ガスを車外へ逃がす機構を備える必要があります。
エアサスに変更した、又は逆パターン通常のサスからエアサスに変更した場合、またその逆の場合も構造変更申請が必要になります。
カーボン・FRPドアに交換した場合大幅な軽量化になる為、通常の金属製のドアからカーボンやFRP製のドアに交換する人もいると思いますが、社外品は、側面からの衝突安全性が証明出来ない為、原則車検には通りません。
原則通らないと言うのは、自前で試験車とドアを用意して破壊検査を実施すると通す事も出来るようですが、物凄い金額が掛かります。
エアポンプを取り外した場合RE(ロータリーエンジン)車には、排ガス浄化の為にエアポンプが装着されています。車検に合格する為には、本来の性能を発揮する事が出来るエアポンプである必要があります。 エアポンプを取り外した場合には三元触媒が必要です。尚且つ、排ガスが基準値内に収まっている事を証明し、構造変更申請をしなければ車検には通りません。。
エアポンプレスにする場合には、触媒を交換した上で排ガスレポートを提出して構造変更申請をする必要があります。
適切にロールケージを装着していない場合ロールケージ(ロールバー)等を組んでいる場合は、乗員保護の為に、パッドなどの緩衝材を取り付ける必要があります。また、装着しているロールケージが運転者の視界を妨げない事、乗員の定員数が維持出来ているか、乗員に必要な空間が維持されているか否かが、合否に影響します。

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●並行輸入車の場合

 並行輸入車の場合、そのままでは車検に通らない事があります。並行輸入車とは、国内の正規ディーラーや販売店等を通さず日本国内に入ってきた車になります。メーカーのルールに沿っていない等制限が全く無い為、メンテナンスが大変というデメリットがあります。それもそのはず、正規の輸入車と違って、部品の在庫が無い事も考えられますし、修理やメンテナンスに対応出来る業者も多くありません。特に灯火類等(ヘッドライトやスモールライト、ウィンカー、フォグランプ、ブレーキランプ、バックランプ)等は、現地の使用と日本の保安基準が適合せずに車検に通らない事があります。

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●書類等その他の要因で車検に通らない場合

 自動車そのものに問題は無くても、その他の不備が要因となって車検証が発行して貰えない事があります。

書類不備の場合必要書類が全て揃っていないと車検証は発行して貰えません。
よくあるのが、自賠責保険の有効期限が足りない場合と、納税証明書が無い場合です。納税証明書は、普通車の場合であればネットワークで納税確認に対応してる都道府県もありますが、軽自動車の場合は原則必要になります。また、軽自動車は地方税となり各市町村の管轄となる為、あらかじめ役所等で納税証明書を用意しておく必要があります。
自動車税を支払っていない場合根本的に、自動車税を支払っていない場合は新しい車検証を発行して貰うことは出来ません。車検迄に納付しましょう。
駐車違反を放置している場合駐車違反をして、反則金を払わずに放置している場合も、新しい車検証は発行して貰えません。反則金の未払いがある場合は車検迄に納付しましょう。
リコールを受けていない保安部品(公道を安全に走行する為の部品)がリコール対象の場合は、部品の整備を行わないと車検には通りません。リコール対象が、保安部品に該当しない場合はこの限りではありませんが、自己判断は避け、専門業者に確認を行いましょう。

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●車検に落ちた時

 陸運局等で車検を通す場合、検査ラインで落ちてしまっても、当日中は合計3回迄検査を受ける事が出来ます。不具合箇所等を修正して検査に再度通すのですが、最悪当日中に通せなかった場合は、「限定自動車検査証」と呼ばれる、検査に落ちた項目以外に限定した車検証が交付されます。この検査証は15日間有効で、この15日の間に落ちた項目の合格を目指す事になります。検査申請時点で自動車検査証の有効期限が切れていたり、残存有効期限を過ぎた場合の運行には臨時運行許可証が必要になります。

また、再検査を受ける為には、合計1300円分の印紙と証紙を購入する必要があります。

・自動車検査登録印紙→400円

・自動車審査証紙→900円(300円×3枚)

 15日以内に再検査を受ける事が出来ない場合は、一から車検を受ける必要があります。その際は印紙代等が変わってしまいますので注意が必要です。

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●まとめ

 今回は車検に落ちる原因を紹介しました。車検の項目は、意外と細かな所まで見ていますし、検査官も目を光らせています。無駄に費用や時間を掛けない為にも、車検前に出来る対策等はしておきましょう。