急がば回れ!「車検以外の点検の必要性」

車検以外の点検の必要性

 「車検費用の相場や内訳ってどうなってるの?」でもお伝えしましたが、車は車検以外にも点検が必要です。その中には「法定点検」と言って、道路運送車両法で定められた定期点検も含まれます。「車検受けたら、2年後まで何も無いんじゃないの?」「車検受けたばっかりなのになんで点検のお知らせハガキが来るの?」等の経験&疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 今回は、車検以外の自動車の点検についてお話していきたいと思います。

●点検の必要性

 「車検と点検は違うの?」多くの方が抱く疑問です。「車検の時期でもないのに点検のハガキが来るのはなんで?」「車ってそんなに頻繁に見て貰わないといけないの?」等、どうもスッキリしません。

 近年では、自動車に関する技術や素材の向上により、故障や不具合は発生しにくくなっています。それだけに、「空気圧って何?」「どんな風になったらオイル交換しないといけないの?」等、時々思い出しはするけれど、不具合も無い為、乗りっぱなしで点検等意識した事無いという人が非常に増えています。「車は壊れないもの」「車は動き続けて当たり前」というイメージが強く、それ故に自動車の点検や整備に対する意識が低下するという悪循環が起こるのです。その為、点検のおハガキをお送りすると「そんなに点検って必要なの?」と仰る方もいらっしゃいます。結論からお伝えすると、安心安全にご乗車頂く為には、定期的な点検整備は不可欠です。車は時間と共に劣化します。それをお客様にご理解頂きたいと思うと共に、“もっと意識を持って頂きたい”という思いがあります。適切な点検整備を実施する事が“急がば回れ”で安心安全で快適な自動車生活を送る早道になります。

 では実際にどんな点検があるのか、その内容や点検を行うタイミングについて見ていきたいと思います。

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●点検の種類と点検内容、点検を行うタイミング

 点検には、①法定点検、②日常点検、③新車点検、④ディーラーや販売店の独自点検、⑤メーカーの無料点検があります。それではそれぞれの点検についてその内容を見ていきたいと思います。

①法定点検

 法定点検とは、定期的に実施する事を法律で義務付けられている点検の事ですが、罰則を伴わない法律の為、実際には法定点検を知らないという人も少なくありません。乗用車の場合は「24か月」と「12か月」、バンなどの貨物車の場合は「12か月」と「6か月」、事業用車やレンタカー等は「3か月」になります。

 法定点検を実施すると、点検ステッカーと整備記録簿が発行されます。フロントガラスの左上に貼っている丸いステッカーが法定点検のステッカーになり、法定点検を実施した日付と次の法定点検の日程、点検を実施した事業者が記載されています。

 法定点検は分解整備を伴う為、認証工場または指定工場で実施しなければなりません。整備士の資格を持っていれば、整備する事は可能ですが、認証を取得していない工場で分解整備を行う事は違法になりますし、国の基準を満たした設備や整備士を備えた認証工場で点検を行う事によって、安心して自動車に乗って頂けると思います。

 中古車情報等に「点検整備記録簿有り」と記載されている時は、この法定点検記録簿が残っていますよ、という意味合いになります。

 記録簿の日付や内容から、その自動車がどんな点検整備を受けてきたのかを知る事が出来ます。基本的に、乗用車の「24か月」、貨物の「12か月」点検は、車検時に同時に実施されますので、実際には車検時の点検整備はこの法定点検の事を指します。

 車検期間が半分過ぎると、「12か月」点検と「6ヶ月」点検を実施します。この法定点検の設定は、自動車の安全を最低限維持する為にはこの期間での点検が適切との観点から定められています。法定点検のタイミングは、車検毎と車検期間の半分と覚えて頂けたらと思います。

【法定点検の内容】

点検の項目数は車種によって異なります。

・乗用車の法定点検 12か月点検 → 26項目、24か月点検 → 56項目

 → 国土交通省「自動車点検整備」参照

○12ヶ月点検

点検箇所点検項目点検の内容
かじ取り装置パワーステアリング装置ベルトの緩み及び損傷
制動装置ブレーキ・ペダル遊び及び踏み込んだときの床板とのすき間
ブレーキの効き具合
駐車ブレーキ機構引きしろ
ブレーキの効き具合
ホース、パイプ漏れや損傷、取付状態
マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ、ディスク・キャリパ液漏れ
ブレーキ・ドラム、ブレーキ・シュードラムとライニングとのすき間
シューの摺動(しゅうどう)部分、ライニングの摩耗
ブレーキ・ディスク、パッドディスクとパッドとのすき間
パッドの摩耗
走行装置ホイールタイヤの状態
ホイール・ナット、ホイール・ボルトの緩み
動力伝達装置クラッチペダルの遊び、切れたときの床板とのすき間
トランスミッション、トランスファ油漏れ、油量
プロペラ・シャフト、ドライブ・シャフト連結部の緩み
電気装置点火装置点火プラグの状態
点火時期
ディストリビュータのキャップの状態
バッテリターミナル部の接続状態
原動機本体排気の状態
エア・クリーナ・エレメントの状態
潤滑装置油漏れ
冷却装置ファン・ベルトの緩み、損傷
水漏れ
エグゾーストパイプとマフラー取付けの緩み、損傷

○24ヶ月点検

装置点検項目点検内容
かじとり装置ハンドル操作具合
ギヤ・ボックス取付けの緩み
ロッド、アーム類緩み、がた、損傷
ボール・ジョイントのダストブーツの亀裂、損傷
かじとり車輪ホイール・アライメント
パワーステアリング装置ベルトの緩み、損傷
油漏れ、油量
取付けの緩み
制動装置ブレーキ・ペタル遊び、踏み込んだときの床板とのすき間
ブレーキのきき具合
駐車ブレーキ・レバー引きしろ
ブレーキのきき具合
ホース、パイプ漏れ、損傷、取付状態
マスタ・シリンダ、
ホイール・シリンダ、
ディスク・キャリパ
液漏れ
機能、摩耗、損傷
ブレーキ・ドラム、ブレーキ・シュードラムとライニングのすきま
シューの摺動部、ライニングの摩耗
ドラムの摩耗、損傷
ブレーキ・ディスク、パッドディスクとパッドとのすき間
パッドの摩耗
ディスクの摩耗、損傷
走行装置ホイールタイヤの状態
ホイールナット、ホイールボルトの緩み
フロント・ホイール・ベアリングのがた
リヤ・ホイール・ベアリングのがた
緩衝装置取付部、連結部緩み、がた、損傷
ショック・アブソーバ油漏れ、損傷
動力伝達装置クラッチペダルの遊び、切れたときの床板とのすき間
トランスミッション、トランスファ油漏れ、油量
プロペラシャフト、ドライブシャフト連結部の緩み
自在継手部のダストブーツの亀裂、損傷
デファレンシャル油漏れ、油量
電気装置点火装置プラグの状態
点火時期
ディストリビューターのキャップの状態
バッテリーターミナル部の接続状態
電気配線接続部の緩み、損傷
原動機本体排気の状態
エアクリーナ・エレメントの状態
潤滑装置油漏れ
燃料装置燃料漏れ
冷却装置ファンベルトの緩み、損傷
水漏れ
ばい煙、悪臭のあるガス、ブローバイ・ガス還元装置メータリング・バルブの状態
配管の損傷
有害なガス等の発散防止装置燃料蒸発ガス排出抑止装置配管等の損傷
チャコール・キャニスタの詰まり、損傷
チェック・バルブの機能
一酸化炭素等発散防止装置触媒反応方式等排出ガス減少装置の取付けの緩み、損傷
二次空気供給装置の機能
排気ガス再循環装置の機能
減速時排気ガス減少装置の機能
配管の損傷、取付状態
熱害防止装置遮熱板の取付けの緩み、損傷
エキゾースト・パイプ、
マフラー
取付けの緩み、損傷
マフラーの機能
車枠及び車体緩み、損傷

②日常点検

 日常点検とは、お客様ご自身で実施して頂く点検の事を指します。一般的にマイカーと呼ばれるユーザーに於いては、走行距離や運転時の状態等様子を見ながら、適切な時期に実施する様、国土交通省の手引きに掲載されています。また事業用自動車については、一日に一回運行前に実施する事が掲載されています。

詳細はこちらをご覧ください。

国土交通省「安全な車社会のために」より

https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t1/t1-2/

 一般の方の点検のタイミングは、人によって様々です。出かける前には必ず点検するという人から、遠出の時だけ、時間がある時に、と仰る人もいれば、ほぼやった事が無いという人まで千差万別です。

 日常点検そのものは、少しの時間で出来る簡単な点検です。推奨されているのも一月に一回程度ですので、嫌だなぁ~と決めつけてしまわず、まずは第一歩を踏み出してみましょう。以下に、推奨されている日常点検の内容を紹介致します。全部点検しても10分程度で出来ますので、皆さんも日常点検にトライ!してみて下さい。

エンジンルーム内エンジンオイルの量
ブレーキオイルの量
冷却水の量
バッテリー液の量
ウインドウォッシャー液の量
タイヤ廻りタイヤの空気圧
タイヤに亀裂や異常な摩耗などがないか
タイヤの溝の深さ
各ランプ各ランプの点灯、レンズに割れがないか
室内の点検ブレーキペダルの踏みしろ、効き具合
パーキングブレーキの引きしろ、効き具合
エンジンの掛かり具合
エンジンの加速などの状態
ウインドウォッシャー液の噴出状態
ワイパーのふき取り状態

③新車点検

 新車を購入した場合に実施する点検です。初期不良等が無いかの確認の為の点検になりますので、大切な点検になります。一般的には購入から「1ヶ月」と「6ヶ月」点検があり、点検は無料です。乗車していて、万が一何か気になる事がある場合は、このタイミングで必ず相談しましょう。

新車点検の内容

ハンドル廻りパワーステアリングオイルの量
パワーステアリングベルトの緩み
エンジン周りエンジンオイルの量
冷却水の量・漏れ
バッテリー液の量
燃料の漏れ
ファンベルトの緩み
ブレーキ廻りブレーキペダルの踏みしろ、効き具合
サイドブレーキの引きしろ、効き具合
駆動系クラッチペダルの踏みしろ・オイル漏れ
トランスミッションのオイル漏れ
デファレンシャルのオイル漏れ
下廻りサスペンションのオイル漏れ・損傷
タイヤ廻りタイヤの空気圧
ホイールボルト・ナットの緩み
車外各ランプの点灯・レンズの損傷
車内ウォッシャー液の噴出具合
ワイパーのふき取り

④ディーラーや販売店の独自点検

 アフターサービスの一環として、独自の点検を設定している店舗もあります。点検内容や時期は、業者によって異なります。ディーラーの有償サービスにはメンテナンスパック等もありますが、メンテナンスパックが必要か否かは、お車の状況や使用頻度によっても異なりますので、メリットデメリットを考慮の上、加入の是非を決めるのが良いのではないでしょうか。

⑤メーカーの無料点検

 有名なものでは「スズキの愛車無料点検」があります。トヨタでは「トヨタオリジナル点検」日産では「安心○ヶ月点検」というのがあります。

 ここでは、「スズキの愛車無料点検」を取り上げたいと思います。

 対象は2020年以前に登録・届け出のスズキ車になります。

 点検項目は15項目あります。(年によって内容が多少変わりますが概ね以下の内容になります) 

エンジンルームエンジンオイルの量
冷却水の量・漏れ
バッテリー液の量
ブレーキオイルの量
エアクリーナーの汚れ
ベルトの張り具合
燃料の漏れ
車体廻り各ランプの点灯・損傷
タイヤの空気圧
ホイールナット・ボルトの緩み
トランスミッションのオイル漏れ
室内ブレーキペダルの踏みしろ・効き具合
サイドブレーキの引きしろ・効き具合
ワイパーのふき取り
ウインドウォッシャー液の噴出具合

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●長期休暇や長距離運転の前には点検を

 大型連休や夏休みの前には、駆け込み点検が増える傾向にあります。ある程度余裕を持ってご連絡下さる、または相談して下さるお客様に関しては、時間的余裕だけでなく気持ちの余裕も持ち合わせている為、部品交換の必要が発生したとしても、“予定通り”出発される方が殆どです。それに反して「明後日から○○に行くから念の為車を見て欲しい」と仰るお客様に限って、大きな問題が見つかる事があります。これを読んで下さっている皆様は「へ~不思議だなぁ」と思われるかも知れませんが、実は不思議でも何でもないのです。このたとえは「一事が万事」を現しています。

 前者のお客様は、常日頃からご小まめに点検等を行っているお客様です。車は劣化する、部品は摩耗する事を理解し、点検・整備を怠る事は「人命に係わるリスクを負い、多大な出費の原因」になる事をご理解して下さっているので、何事も早めにご相談して下さいます。それに対して、後者のお客様は、点検整備を普段から軽視される一面をお持ちです。その差がお車に大きな差を生む事になります。

 大袈裟に聞こえるかも知れませんが、現に渋滞に巻き込まれてオーバーヒートやエアコンが故障してからでは、せっかくの楽しい旅行も台無しです。

 法定点検のタイミングでは無いけれど、長距離走る、遠出する、そんな時はまずはお電話いただけたらと思います。その上で、点検を実施し、不具合や不安要素があれば、お客様の生活スタイルやご予定等諸事情を考慮したご提案が出来るかもしれません。

 ここまで読んでも、「でもやっぱり点検迄は・・・」「ちょっと大げさじゃない?」と思われているお客様も、メーカーが休みに入るゴールデンウィークやお盆、年末年始は部品供給がストップする事を、頭の片隅に置いておいて下さい。折角のご予定を台無しにしてしまわない為にも、前もっての点検をお勧め致します。

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●予防整備という考え方

 乗車されている時に異常が発生した場合、車の故障・不具合→修理という構図が成立していまあす。例えば、エアコンが効かない!暑さ寒さを実感します。そして車を修理に出します。お店で「冷媒ガスが少なくなっています。」「エアコンフィルターが目詰まりしています」。「○○が原因で冷えません」と言われれば、これ程わかりやすい経緯はありません。

 今お話しした、カーエアコンで例えると、「もしエアコンが効かなくなる前に対応(点検修理)していたら」。乗車している時に不快な思いをする事も無かったでしょうし、時間をロスする事も無かったはずです。現状は問題無いけれど、近い内に故障の発生等が予想される時には、部品交換等の提案をする事を「予防整備」と呼びます。そうする事により車の安全性や信頼性を高め、故障や事故のリスクを減らす事が出来ます。「壊れてないのに交換が必要なの?」「過剰整備じゃないの?」と感じられる方がいらっしゃるのも勿論理解出来ます。何と言っても壊れていないのですから。

 では、整備事業者(整備士)はこの「予防整備」を、何を根拠に提案しているのでしょう?それは、例えば年間1万km程度走行している、または車の現状から1万km先、または1年後の車の状態を予測します。次に入庫(点検)して頂く迄には不具合が発生しそうだなと思われる箇所・部品についてお客様にお話し(提案)、交換等の提案を致します。言い換えれば、法律で定められた点検(法定点検)は予防整備と言い換える事が出来ます。

 比較的走行距離の伸びるお客様であれば、今はブレーキパッドの残量が十分でも、次回入庫迄にはこの残量では危ないなという様に、単に車の状態だけではなく、お客様のクセや車の使用状況等も加味して判断する事も大切です。

 このブレーキパッド、もし予防整備しなかったら…。パッドが完全に無くなってしまい、ローター等に傷を付けてしまうと、ローターの交換等も必要になります。もっと酷い状態になると、ブレーキオイルの漏れに繋がる事もあります。こうなると修理費用もかなり高額になります。何より、ブレーキは自動車にとって重要な装置になりますので、パッドが無くなってしまう事により、重大な事故に繋がる恐れがあります。

 整備事業者(整備士)は、この様な事を考慮しながら、お客様に安心安全にお車に乗って頂けるように、 通常の修理は勿論、予防整備等についてもご提案させて頂いています。

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●まとめ

 車検以外の点検の必要性について起筆させていただきましたが如何でしたか?過剰点検は必要ありませんが、少し意識を変えて頂いて、最低限度の点検を行う事で走行中に様々な問題が発生する可能性を抑える事が出来ます。そして車の寿命を延ばし、車を長く使う事で、経済的なメリットが生まれます。

 お客様お一人お一人、車との付き合い方や使用頻度等は違いますので、お客様に合った点検の形がありますので、ご理解頂いて楽しいカーライフをお過ごしください。また「お客様に合った点検の形」がわからない場合は、どうぞお気軽に弊社までお問い合わせ下さい。