3代目プリウス(2009年~2015年)
●年間売上台数日本一は通過点
着々と売り上げを伸ばしてきたプリウスは2009年には20万台を販売し、年間新車販売台数1位を獲得します。既に環境にやさしい車として不動の地位を築き、ステータスカーとしても周知されていました。そんな3代目プリウスに課せられた開発指令は「ハイブリッド年間販売100万台計画」でした。
ハイブリッドって何?からスタートしたプリウスが、2代目で爆発的ヒットを飛ばし、環境性能で選ばれる車となり、そして年間100万台!
この数字は単に100万台売ればいいという事ではありません。THSⅡは従来の車に比べると構造上システムが複雑な為コストが割高になり、売れば売るほど会社の収益性は低くなるのがプリウスでした。「儲からないハイブリッドを100万台」…。解決策はハイブリッドシステム自体のコストを下げる事でした。時は2005年の事です。
渡辺社長(当時)のシナリオは、ハイブリッドシステムのコストを半分にする事が出来たら、トヨタを猛追する欧米メーカーに対して、圧倒的な強さで突き放すことが出来、その地位を盤石なものに出来るというものでした。それは、ハイブリッドシステムを搭載した車を普通車と同じ収益性を持った車にするという事に他なりません。
(フルモデルチェンジで)新車販売する場合、新旧の並行販売は行わないのが通常です。ですがプリウスの場合、2代目は2003年~2011年まで、3代目は2009年~2015年と、重なっている時期があります。そして販売面を見ても、ハイブリッド車販売のボトムアップに対する本気度が伺えます。今まではトヨタ店とトヨペット店のみで販売していましたが、普通車の取り扱いが多いネッツ店や、カローラ店も含めた4チャンネルすべてでプリウスを販売する事が決定したのです。そして2代目プリウスは世界44か国で販売されていたのに対し、3代目プリウスは何と世界80か国で拡販されたのです。過去に例を見ない手法をトヨタは次々と繰り出していきました。そして3代目プリウスはその90%が新たに開発されたシステムを搭載しており、結果燃費性能は7%向上(38.0km/ℓ)する事に成功しました。ハイブリッドシステムは更に進化を遂げたのです。
そして、3代目プリウスは2009年5月発売からわずか1ヶ月で18万台を受注し、トヨタでは過去最高を記録しました。そしてHVはここから更に進化する事になります。2012年末までにプラグイン・ハイブリッド車(PHV)を投入する計画を発表したのです。
単位:万台
トヨタ自動車HP より

●タクシーとして大活躍「プリウスα」
皆さんは、プリウスαがタクシーとして世界各地で活躍しているのをご存知でしょうか?ハイブリッド車は低速域ではモーター駆動なので、ストップ&ゴーが多い都市部では燃費効率が良い(=ランニングコストを削減出来る)事が理由です。 では、ここで少し横道に逸れますが、世界のタクシー事情を見てみましょう。
日本 | クラウン→JPNタクシー プリウスα ※1 | 「いつかはクラウン」というキャッチコピーが有名になり過ぎる程、国民の憧れだったクラウン。今は生産停止になり、後を継いだのがジャパンタクシー。同じトヨタブランドです。シエンタがベースになっており、LPガスハイブリッドエンジンを搭載しています。 プリウスαをタクシーに採用している企業は多く、LPGに改造した事により、約1,300km無給油連続走行が可能。 |
アメリカ (ニューヨーク) | トヨタ、日産、フォード等 | 通称イエローキャブ。由来は「遠くからでも目立つ色」だから。 1990年代はフォード社の「クラウン・ビクトリア」が全体の90%以上を占めていたが、現在はハイブリッド車の積極的な導入が推進されている事もあり、トヨタのプリウスα、カムリハイブリッド、RAV4等トヨタ車が多数走っている他、日産のNVバネットも使用されており、様々な車種がニューヨークを走っている。 |
ドイツ (フランクフルト) | メルセデス・ベンツ ゴルフ プリウスα | 最も多く見掛けるのがメルセデスベンツ(Eクラス)。装備を絞り価格を抑えたタクシー専用仕様が設定されている。エンジンはディーゼルエンジンを搭載。ベンツ以外にはフォルクスワーゲンのゴルフトューラン。どちらも色がクリーム色なのは、昔タクシーの色が法律で決まっていた頃の名残。 そして時々走っているのが、トヨタのハイブリッドカー「プリウスα」。現地では「PRIUS+(プリウスプラス)」という名前が付いています。 |
オランダ (アムステルダム) | テスラ | タクシーの半分がテスラ。その理由はオランダでは電気自動車の充電を無料でする事が出来る為。家で充電したらお金がかかるが街中なら無料。 |
イギリス (ロンドン) | ロンドンタクシー (現在の経営権は中国メーカー) 日産 バネット | 70年の歴史を持つロンドンタクシー。アメリカのイエローキャブに対してブラックキャブと呼ばれるタクシー車両。 長年に渡りイギリスの自動車メーカー最大手のブリティッシュ・モーター・コーポレーションとその後身企業が「オースチン」ブランドで販売していたが幾度かの変遷を経て、中国メーカーに経営権が移管される。 現在は日産のNV200バネットがロンドンタクシーの新型モデルとして活躍中。 |
タイ (バンコク) | トヨタ カローラ | カローラアルティスという名前で販売されている現地モデル。 対では、日本車率が高いが、中国系メーカーがEV車の現地生産を開始したので日本車危うし! 変わり種ではピックアップトラック(ハイラックス)のタクシー等もある。 |
ベトナム (ホーチミン) | トヨタ イノーバ | 脱セダンとして、電動化が推進されているので、今後は街中を走るタクシーの車種は変化する可能性大! |
お国柄や政治等が、タクシー市場にも反映されているのが垣間見えます。全体的な流れはやはり電動化でしょうか。ヨーロッパは昔からディーゼルエンジンがメインでしたが、排ガス規制が厳しくなった事もあり、電動化が進んでいます。アジア各国でも電動化の動きが止まる事は無いと思われます。韓国(ソウル)でもEVタクシーが走り、トヨタ車をこよなく愛してくれている台湾でも路線バス等には中国系メーカーのEVバスが走る等、中国企業の投資戦略が際立っています。各国で愛されているトヨタ車ですが、開発の手綱は緩めるわけにはいかないのがタクシー事情等からも垣間見えます。
環境問題や都市事情からチョイスされ愛されてきたプリウスαは、3代目プリウスが発売された2年後の2011年5月に発売されました。ハイブリッド車の世界累計販売台数が300万台を突破した3か月後の事でした。そしてプリウスαが発売された3か月後、プリウスの国内累計販売台数100万台を突破したのです。プリウス全盛期と言っても過言ではありません。
プリウスがセダンなのに対して、プリウスαはワゴン車になり、一回り大きいのが特長です。定員も7人迄乗車できるのもプリウスとの大きな違いです(5人乗りモデルのプリウスαもあります)。車内は広く、後部座席が独立してスライド、リクライニング出来るシートになっています。荷室もプリウスより広く、荷物の積み下ろしがしやすいのもタクシー車両として人気があった理由かもしれません。
●プリウスα 番外編
プリウスαがタクシーとして世界で利用されている事は、日本人としてとても誇らしくまた嬉しくも感じます。そこでプリウスα番外編を少しだけお届けしたいと思います。
国内の複数のタクシー会社で使用(採用)しているのが、ガソリンと電気に加え、LPG(液化プロパンガス)も使用する事が出来るプリウスαの導入です(バイフューエル車)。燃費が向上しCO2の排出量も大幅に削減されました。製造・販売しているのは山形の会社ケイテック㈱。エコが売りのプリウスが究極のエコカーになってしまったのです!
このバイフューエル方式、一つのエンジンに二つの燃料(ガソリンとLPガス)を使えるシステムで、普段はLPガスで走り、ガスが無くなるとガソリンに自動的に切り替わります。メリットは何と言っても1リットル当たりの単価の安さです。ガソリンが約160円/ℓ(参考価格)なのに対してLPガスは約80円/ℓ(参考価格)と安価である上に、ガソリンと併用するので航続距離がグーンとアップします。ガソリン(約40ℓ)とLPガス(約40ℓ)を満タンにすると、その航続距離は何と1600kmにも及ぶのです。
大きな震災があると、必ず取り沙汰されるのが燃料(ガソリン)不足と混乱です。特に東日本大震災発生直後は製油所が被災した事もあり、ガソリンと軽油が一時的に品薄になり供給不安となりました。特に支援物資の運搬において大きな影を落としましたが、この時活躍したのがLPGプリウスαだったのです。ガソリンや軽油に比べて燃料(LPG)供給が安定していた事もあり、タクシーや一部の配送車が大活躍!特に宮城県では震災前に比べて130万km(地球約33周分)以上走行距離が増加する等、物資輸送だけでなく救護タクシーとしても活躍しました。航続距離1600kmのLPGプリウスαだからこそ成し得た異業ではないでしょうか。
●追い風「エコカー減税・エコカー補助金」
3代目プリウスが発売された年「エコカー減税」と「エコカー補助金」がスタートしました。環境対策に配慮した車への買い替えや購入に対する補助金制度のスタートです。
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国土交通省「エコカー減税(自動車重量委税)の概要」
国土交通省「エコカー補助金」の概要」
この制度が、トヨタ(プリウス)にとって追い風になった事は言う迄もありません。3代目プリウスは、発売された翌年にカローラを抜いて、年間最多販売台数で首位になりました。カローラの持っていた記録は年間30万8千台、プリウスはそれを上回る31万5千台が販売されたのです。大衆車の代名詞と言われたカローラを抜いてプリウスが首位になった事は、何より環境に対する社会の機運が醸成した事を物語っており、時代を映し出す鏡の役割をプリウスが担った結果ではないでしょうか。象徴から一般化(大衆化)へ。私たちはやっとアトムに追いついたのかも知れません。アトムは「待っていたよ」と言ってくれる気がします。